開会式 オープニング・セレモニー

 シリア、ベイルート、カンボジア、次いでカラカス、テキサスへ飛んだかと思うとサウジへ、またデトロイトへとビデオ画面はめまぐるしく変わる。世界はひとつの歌と踊り。その国や土地の若者たちが、手を振り腰を振り足を上げ、ひとつの曲で歌い踊る。
アメリカ西海岸で活躍するM・ジョンソンがプロデュースする“プレイング・フォー・チェンジ”(PFC)の曲が流れる。日本では大和ネクスト銀行が「スタンド・バイ・ミー」をCMソングとして取り入れたのが最初だったと思う。100人以上もの世界のミュージシャンが世代を超えて参加する演奏。人々に感動を与える楽曲として、PFCは04年にグラミー賞のコンテンパラリー・ブルース・アルバム部門で受賞。PFC基金が創設され、CM等からの収益金が難民への物資提供や学校の設立などに役立っている。

 次いで国歌吹奏で全員起立。前会長レイ・ジョンソンさんが登壇し、新会長ローラ・シンプソンさんを演壇に招く。
 「皆さんようこそボストンへ」PCOの将来へ向けたシンプソンさんの戦略が披瀝される。「まず、申し上げたいことは、昨年1年間をかけて実施した会員の皆さんを対象にした、オンライン・サーベイの結果のご報告です」
NPMAは会員が何を望み会員になることで、どのようなメリットを感じているかの調査を行った。これをもとに将来的に取り組むべき重点課題を絞り込んだという。
回答者の半数以上が、NPMA会員になるメリットを「組織に属すことの利益」にあると
答え、その利益とは、自らの企業経営の支えになると同時に、顧客の信頼を向上させ得ることのほか、州が行うPCO関連のさまざまな催しに参加できるからと言う。
なかでもNPMAが行う「行政との連携」が重要中の最重要事項だとの指摘が多かった。
「このサーベイを2月と7月に開催した役員会で討議して、次のような三つのゴール(目
標)を目指すと決めたんです」とローラさん。
・協会はPMPのための知識技術情報の究極の源泉となるべきこと。
・協会はPMPのために各種規制や法制化に先んじて積極的に活動すること。
・協会はペストマネジメント産業の重要性ならびに認知向上の強化に取り組むこと。
 今までの方針とどこがどう違うのか。長年にわたってこの協会に関心を寄せている筆者
にとって、何を今更の感なきにしも非ずだが、会長が代わればこのように自身の方針を出
すのがアメリカ流と、言ってしまえばそれまでの話ではある。

 次に登壇したのは地元ニューイングランド・ペストマネジメント協会の、やはり女性会長のマリリアン・ミシッティさんの歓迎挨拶。当然のことながら、やはり3週間後に迫った大統領選の、ロムニー候補の応援演説に終始した。
 このオープニング・セッションはバイエルの提供。バイエルのクリス・ピエナーさん
が登壇し挨拶。「ここボストンはエコロジーの先進都市でもあります。市街地内の移動には
専ら自転車を使います」。「また、MLBのボストン・レッド・ソックスが活躍するフェンウエイ球場があります」。と、いきなり正面の画面に映画「マネー・ボール」の数シーンが映写される。
ブラッド・ピット主演のこの映画は公開当時、日本でも大ヒットした。ブラピ扮する球団GMが、勝てない球団を優勝できる球団へと変えるお話し。この球団には金が無い。野球経験は無いがデータを読む専門家・ピーターをスタッフに雇う。彼の意見に沿って、年俸は安いがコストパフォーマンスの良い選手を、次々に雇い入れ、チームを再編。
そして苦心の上の大成功と、おなじみハリウッド映画の大団円となるのだが「で、片付けてはいけません。いまNPMAもこの映画に見るような、将来へ向けてのマーケテイング・ストラテジーを模索しているところなのです」
MLBの超貧乏球団オークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンの半世紀を描く実話なのだが、この種の話が大好きなアメリカ人である。ピエナーさん大きな拍手で送られて、壇を降りる。
客席後方から大きな太鼓の音が響き渡る。地元の有名な私学、ボストン大学のマーチング・バンドが入ってくる。壇上には生きのいい3人のチアリーダーが、元気のいいこと。本日の呼び物ペップ・ラリー(壮行会)の始まりだ。聞くところによれば、このボストン大学のバンドは世界コンテストで優秀な成績を重ねながら、アメフトの応援などには一切応じないという。で、今回のチアリーダーも地元女高生の応援出演らしい。
さあ、いよいよ“ペストワールド2012”の開会だ。マーチに乗って聴衆が会場へと向かう。

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