モニタリングの現場から―説得力のある大型施設調査報告書作成のヒントⅠ―

鵬図商事株式会社 企画営業部長 白石啓悟

 前回は、飲食店でのゴキブリ防除の報告書について、説得力のある書き方を検討しました。
 今回からビルや工場等大型施設での調査報告書の書き方について検討します。

 建築物衛生法が改正され、IPMでの取り組みが盛り込まれ、以前にもまして報告書作成の機会が増えて来ました。また前号でもお話ししましたが、報告書の書き方一つで、お客であるビルオーナーや工場長などの協力も得やすくなります。報告書作成力はますます重要になると考えられます。
 今回は、大型施設での調査報告書の書き方について、1)報告書の構成、2)図面の書き方の2点を検討します。

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1)報告書の構成

 一般的な報告書は、表紙に報告書ナンバーや作成日、お客様名(宛先)、報告書題及び自社名を書きます。そして次頁に“はじめに”から始まって、調査目的、調査日時、調査場所、調査方法(トラップの種類とトラップ数)、調査実施者と結果が続きます。
 私も最初はこの構成で書いていましたが、①“はじめに”の文章を考えるのに時間がかかる、②表紙頁をめくらないと内容が出てこないという点から、表紙に、調査日的、調査日時、調査場所、調査方法(トラップの種類とトラップ数)、調査実施者、それと結果概略までも書くという構成に変えました。要は表紙さえ見れば基本的なことは分かる構成にしました。そして2頁目から、具体的な(詳細な)結果幸陪が続くようにしました。

 この構成には三つの利点があります。
 一つ目は“はじめに”の文章を毎回書かなくて良いことです。毎回文章を考えていると大変です。しかし一生懸命書いたとしても、読み手はよほど目新しいことが善かれていない限り読み飛ばしてしまうことが多いのです。私は、最初の提案書もしくは報告書の“はじめに”で相手を惹きつけた後は、日常の報告書では“はじめに”を書かないようにしています。
 二つ目は表紙だけで概略が分かるため、決裁者から評価されやすくなることです。PMPが仕事をしっかりおこなっているか、問題なく管理がおこなわれているかを調べるのに、何頁も開かないといけないのでは時間がかかってしまいます。1頁目に情報を集中させることにより、決裁者は状況を確認しやすくなります。
 三つ目は概略が気になれば本文へと読み手が進むので、結果的に本文を読ませることにもなります。
 報告書の目的は“相手に報告すること”です。重要な部分を読ませなければ意味はありません。例えば2頁から本文が始まって、途中に重要なことが書いてあっても、気がつかないために相手に読んでもらえないこともあるかも知れません。しかし表紙に概略として記載すれば、相手は必ず確認しますし、気になれば本文へと読み進めます。これは極めて重要なことです。

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2)図面の書き方

 報告書にとって図面は極めて重要です。図面の書き方一つでお客であるビルオーナーや、工場長の態度が変わります。適当な概略図ではそれほど前向きでなくても、丁寧な図面を提出することで「ここまでしてくれるのか」と、村策に協力的になってくれることもあります。
 ずっと前に環境調査して報告書を作成した工場に、再びコンサルティングで入ったことがあります。「管理図面はありますか?」の質問に、「あります」と自信たっぷりに答えて出されたのが、以前私が作成した図面でした。私が書いた図面を一番使いやすいからと、コピーしながら管理図面として使い続けてくれていました。このように図面を丁寧に書くということは非常に重要です。

 丁寧に書くとは、正確に詳細に書くということです。
 正確とは、可能な限り設計図通り書くということです。よく見取り図で仕事をされる人がいますが、場所が狭く、構造が簡単な場所なら良いのですが、ビルや工場など大きく形が複雑な建物では、大きさに歪みが出たり、人や物の動線が正確に書けなかったりします。正確に書くということは重要です。
 詳細とは、各部屋の間仕切りだけでなく、ドアやシャッター、机や棚や製造機械まで書くということです。
 ドアは自動なのか手動なのか、スライド式なのか引き戸なのか、引き戸ならどちらの方向に開くのか、シャッターは金属製なのかシートシャッターなのか書き込みます。ビルなどの大型物件は可能な限り机や棚まで書き込みます。工場なら製造機械はどうなっているのか、製造ラインはどうなっているかも書き込みます。詳細に書くためには、各部屋の間取りを正確に書く必要もあります。

 図面を丁寧に書くことによって得られる利点は、次の2点です。

①丁寧な図面自体が競争力になる

 何より、図面を丁寧に書いていますと、他社から契約を切り替えてもらった時、まず図面の丁寧さで前の管理会社との違いを明確に打ち出せますし、逆に他社に切り替えられた時、新しい管理会社の図面を見て、切り替えたことをお客が後悔することになるでしょう。
 いずれにしても、最初に(契約を他社から切り替えた時、契約を他社に切り替えられた時)日に見える形で大きなインパクトを与える効果は大きいと思われます。

②場所をイメージしやすくなる

 “百聞は-見にしかず”という言葉があります。写真を撮ってあとでまとめて説明するより、表やグラフを別に作って説明するより、図面の中に一緒に表すことの方がはるかに分かりやすいです(モニタリングの現場から-説得力のあるゴキブリ防除報告書作成のヒント-:白石啓悟:ホートPMPニュースVOL.388、2007)。
 場所の説明から始まって、次に写真を示して、表やグラフの結果を引用して状況を述べるよりは、図面上にグラフと写真を貼り付けて、「こんな状態だから、こんな結果です」と明確に述べる方が簡潔で、読む側も分かりやすく作成する方も楽です。その時に、図面が丁寧であれば丁寧であるほど、読む側は場所をイメージしやすく、よって分かりやすい報告書となります。

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 次回は図面の書き方の続きをお話ししますが、ここで一つ宿題を出したいと思います。
 昆虫相調査をおこなう目的は、昆虫相を明らかにして、昆虫相からその場所の環境を知ることです。
 何度も書きましたが、昆虫は基本的に自分で環境を変えることができません。ですから昆虫を調べることによって、その場所の環境を知ることができます。昆虫相調査の大前提はここにあります。
 それでは、昆虫相調査の結果を図面で分かりやすく表すためには、どんな工夫をすれば良いのでしょうか?次回までにイメージをふくらませてみて下さい。

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