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 わが国には20万種以上もの合成化学物質が流通し、そのうち約2万種は日用化学品の成分として、コンビニの店頭などにもあると言われる。ところが、それら化学物質の技術情報と言えば、残念ながらごく初歩的なこ
とすら意外と思えるほどに普及していない。
 5月21日に熊本で起きた、クロルピクリンによる中毒事例などはその典型だろう。劇物指定の農薬クロルピクリンで自殺を図った患者が、担ぎ込まれた先の病院で、医師や入院患者ら54人にも及ぶ二次被害を招いてしまった。
 男性が飲んだとみられる薬物の瓶を見つけたが、刺激臭を伴っていたので救急車には載せなかった(時事通信);薬物については我々よりも病院のほうが詳しいはず(読売);吐いて被害が出るとは分からなかった(毎日);ピクリンとだけ知らされ調べたが不明(朝日)と報道もさまざまだが、このナースは関係者らの初動ミスを指摘されても仕方がない。
 なぜならこの農薬は、48年にたばこ栽培用に最初の登録を得て以降、適用が拡大され60年にわたって全国の農地で汎用されている。揮発性が強いなどは常識のはずだ。メーカー団体の農薬工業会なども、似たような事故が起きるたびに安全使用を訴えてきた。
 しかし、輸入作物が食卓を賑わすようになっと現在では、農薬の消費量も金額で往時の半分にまで減少し、その安全使用を促す情報普及活動も手薄になっていることも否めない。
 一方、いま日本で農薬を登録しようとすると、世界で最も厳しい安全性に係る審査をクリアーせねばならない。我々が普段使う医薬品の投虫剤等ではなおさらだ。医薬と農薬の違いこそあれ、関係者等にはより積極的な技術情報の普及活動が望まれる。(龍)

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