ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第5回

鵬図商事株式会社 企画部 芝生圭吾

出典元:月刊HACCP285号より

捕虫器とは・・・

 先月はコバエの生態などについて解説させて頂きましたが、コバエなど飛翔昆虫の活動は月によって変わりますので、毎月の生息調査を行い、発生の傾向を把握する事が重要です。調査には「捕虫器(別名:ライトトラップ、海外ではILT=Insect Light Trap」と呼ばれるハエ等を誘引する波長の紫外線を発する光源を備え、粘着紙でハエを捕獲する機器を用いるのが便利です。しかし、捕虫器と一言で言っても、メーカーや機種によって性能は大きく異なります。今号では、何故ハエは捕虫器に誘引されるのか?捕虫器の効果的な設置位置、捕虫器の違いについてなど解説させて頂きますので、どの機種が自分達の施設に適しているか参考にして頂ければ幸いです。

写真左:捕虫器 オプティカ180(日本カルミック株式会社)
写真中:捕虫器 エコMAX30(鵬図商事株式会社)
写真右:捕虫器 With usゲッター(NTGニューテクノグループ)

ハエ類は何故「蛍光灯」に誘引されるのか?

 ハエ類は一般的に「蛍光灯」の光に誘引されると言われます。その理由はハエ類が持つ2つの習性が影響しています。「紫外線域の光」と「高速点滅」です。

  • 紫外線域の光
     ハエ類の眼は、特定の波長域(300~400ナノメーター)に反応し、誘引されます。蛍光灯は幅広い波長の光を発しており、その中にハエが好む波長域があるので、ハエ類を誘引します。
  • 高速点滅
     ハエ類のように飛行速度の速い虫は、光の変化に早く反応(高フリッカー反応)する習性があります。※蛾やイナゴのような飛行速度の遅い虫は反応が悪くなります。(低フリッカー反応)
    蛍光灯は、私達の眼には常時点灯しているように見えますが、実は高速で点滅(明滅)を繰り返しており、ハエ類は、その高速点滅(明滅)に反応し、誘引されます。

何故ハエ類は捕虫器に捕獲されるの?

 何故ハエ類は捕虫器に誘引・捕獲されるのでしょうか?ハエ類は捕虫器を設置しているからといって、離れた場所から一直線に捕虫器に向かう事はありません。少しずつ近づいてくるように設置位置を工夫し、誘導する事が重要です。捕虫器に誘引・捕獲されるまでのイエバエの行動例を下記に記載させて頂きます。

① イエバエ(雌)は産卵場所を探す時、地面から1m前後の高さを飛行しています。

② イエバエは暖かい空気を求め天井付近に移動します。
※冷房の温度設定が低い飲食店などは特に顕著な傾向があります。

③ 天井付近に移動後、イエバエは天井に留まったり、餌を求め徘徊します。

④ 徘徊時、捕虫ランプの光に反応し誘引される、捕虫器から発せられる熱に誘引される。などで捕虫器に少しずつ近づいてきます。捕虫器自体に止まったりもします。

⑤ 捕虫器周囲を徘徊していくうちに、捕虫紙に着地し、捕虫紙の粘着面に捕獲されます。

UVランプにはハエ類を効率的に誘引する工夫が施されています。

 上記習性を利用し、飛翔昆虫を誘引するのに特化した蛍光灯が「UVランプ(捕虫ランプ・クォンタムランプなどメーカーによって名称が異なる)」と言われる物で、捕虫器に使用されています。
●紫外線域の光
 ハエ類は紫外線の青い光300~400ナノメーターの光に誘引され、特に370ナノメートル付近の波長に特に誘引されます。その為、捕虫器用の捕虫ランプは300~400ナノメーターの出力が中心となるように開発されています。一般的に放射照度が強い、出力ワット数が多いUVランプを使用した方が、誘引性能が高くなります。※メーカーによって放射照度、波長域、出力W数が異なる場合があるので、ご確認下さい。

●高速点滅
 通常の蛍光灯は、光度60%~100%の変化を高速で繰り返しているのに対し、UVランプは、光度10%~100%への変化を高速で繰り返すように出来ており、変化量が大きくなっています。

●ランプの交換時期
 UVランプは必ず定期交換する事をお願いします(基本的に6か月に1回)
 何故かというと、UVランプは、特定波長の紫外線を出しているので劣化が早く、一般的なUVランプで6か月後には出力が53%まで減少してしまいます。出力が半減すれば、誘引性能も比例して減少する事になり、定期的なランプ交換の実施有無で、誘引性能が全く異なります。(下図参照)
 UVランプ交換時に注意して頂きたいことは、「UVランプが点灯している事です」見た目の変化が無いので交換の必要が無いと思われる方が多いのですが、UVランプは特定波長の紫外線を放射していますが、その波長は、私達の眼には見えません。点灯しているように見える光は「人には見えるが、ハエ類を誘引する力が半減してしまっている光です」


左:捕虫ランプが放射している波長グラフ 右:UVランプの設置時間による紫外線照射量の減退

UVランプの合計ワット数が大きい方が誘引性能が良い

 捕虫器に装着するUVランプの合計ワット数も捕虫性能に大きな影響を与えます。合計ワット数が大きいほど照度が高くなり、完全な正比例ではありませんが、概ね誘引性能を向上させます。例えば、日本で流通している捕虫器の中で最もワット数の少ない捕虫器は6ワット×1灯=合計6ワットです。最もワット数の大きい捕虫器は25ワット×2灯=合計50ワットです。比較すると、合計ワット数は8.3倍以上の差が開きますので、誘引性能にも大きな差が開きます。従って、出来るだけ合計ワット数が多い捕虫器を選ぶ事が捕虫性能の高い捕虫器を選ぶ目安と言っても過言ではありません。
●計算式 「捕虫ランプのワット数×装着数=合計ワット数」

捕虫器の入れ替え時は、機種変更による合計ワット数減少に要注意!

 何年も捕虫器を設置していると経年劣化による寿命で交換する時が来ます。その時に注意して頂きたいのは、機種変更です。捕虫器は合計ワット数が少ないほど安価に購入できる機種が多い傾向があり、捕虫器の性能差を考慮せずに機種変更を行った場合、コスト削減の結果、UVランプの合計ワット数が減少し、捕虫性能も低下する可能性を考慮しないといけません。また、捕虫器は害虫の発生状況を把握するセンサーの役割も果たしています。センサーの性能が低下すると、適切な対応を行う判断力を鈍化させてしまいます。また、捕虫器の機種変更後に捕虫数が減少すると、「虫の発生数が減ったから捕虫数が減った」と誤解される方も極まれにいらっしゃいます。しかし、別の対策を講じていない限り、虫の発生数は変わらず、捕虫器で捕獲できていない虫が施設内に増えてしまった事になります。
【対策】
 機種変更を検討している捕虫器と既設の捕虫器で捕虫能力の差を試験しましょう。
 例:今まで100匹捕獲できていたのが、80匹捕獲になった。など機種変更による影響がわかります。機種変更後、捕虫数にその係数をかけて、発生状況を把握しやすくなります。

捕虫器の取り付け場所

 捕虫器の効果を最大限に引き出す最も重要な事は取り付け場所です。以下の5つのポイントを考慮し、取り付け場所を決めます。

●競合する光源(蛍光灯・太陽光)を減らす。
 施設内を照らす光源が多いと捕虫器の紫外線と競合してしまい、誘引力を低下させてしまう原因となります。ハエ類は種類によっては、光の強度を検知する能力に差があります。例えば、ショウジョウバエは、識別する対象物が他の物より2~3倍明るくないと検知できません。イエバエは、光の強度の1%未満の差を識別できる位優れた検知能力を持っています。
【対策】
 太陽光の入る窓、蛍光灯に紫外線カットフィルムを張り、紫外線をカットする。
 照明を蛍光灯からLEDに切り替える事です。

●取り付ける高さ(床または、天井からの距離)
 捕虫機は通常、床から約1.8mの高さに取り付けたときが、最も多くのハエを誘引・捕獲します。
 特にファーストフー ド店のように、エアコンで室内温度が21 ℃ 以下に保たれているところではハエは天井近くに集まります。そこでは空気がより暖かく、イエバエやその他の大 型のハエはその付近にとどまる傾向があります。

●取り付け場所の壁面の素材
 ハエ類は捕虫器周辺の壁や天井に反射した紫外線にも強く反応を示します。その為、壁や天井にも紫外線が反射するように設置する事で誘引性能を高める事が出来ます。反射には、壁面(壁紙)の色が影響し、白色もしくは淡い色の壁面、ステンレスのように輝いた材質は紫外線をよく反射します。濃い色の壁面(壁紙)は紫外線を反射しづらくなっています。

●ランプの設置方向(縦か、横か)
 イエバエを最も誘引するランプの設置位置は横方向です。使用するランプの長短については、捕獲効果にほとんど影響が無いと考えられています。捕獲性能は紫外線の照度(ワット数)の総量によって左右されます。

●捕虫器の取り付け位置
 捕虫器はハエ類を誘引・捕獲できる一方で、外から見て、室内の捕虫器の光が漏れていると、外部からの侵入の可能性を増やしてしまう事もあります。基本的に外や前室から捕虫器の光が見えないように取り付ける事が重要です。食品の入荷から出荷までの動線を確認が外部侵入してきたハエの動線になりますので、動線の順に従って捕虫器の設置位置を検討します。

特徴的な捕虫器

 捕虫器は各メーカーから様々な機種が販売されています。その中でも合計ワット数が高く(捕虫性能が高く)特徴的な捕虫器を3機種ご紹介しますので、参考にして下さい。誌面の都合上、簡単な特徴のみの紹介となりますので、詳細は販売会社様へお問合せ下さい。

オプティカ180

 販売会社名:日本カルミック株式会社
 UVランプ:15ワット×3灯=45ワット
●特徴
 外装カバーが半透明になっており、UVランプの紫外線を透過する為、広範囲・横方向180度にまで紫外線が到達する。外装カバーは一度虫が侵入したら脱出しづらい構造になっています。
※IP65防水加工モデルも有り。


写真左:オプティカ180 写真右:紫外線の到達範囲を示した図(メーカーカタログより抜粋)

エコMAX30

 販売会社名:鵬図商事株式会社
UVランプ:15ワット×2灯=30ワット
●特徴
 間接照明のように見えるデザイン、捕虫紙にはハエのイラストがプリントされており、捕虫紙への誘引性を高めています。捕虫紙(カートリッジ)が自動で巻き上げられ、いつも捕獲面の粘着部が新しく、優れた捕虫効果を保ちます。2か月間捕虫紙を交換する手間がありません。


写真左:エコMAX30 写真右:捕虫紙(カートリッジ)

With us(ウィザス)ゲッター

 販売会社名:NTG ニューテクノグループ(害虫防除業者6社によるグループ)
 UVランプ:25ワット×2灯=50ワット
●特徴
 害虫防除のプロ業者6社が商品開発に携わり、プロのノウハウが活かされた捕虫器です。紫外線で誘引しにくい「大型バエ」もよく捕獲でき、素早く虫を捕獲する事が出来ます。捕虫紙ホルダーがコの字型なので、虫の落下・飛散を防ぐ事が出来ます。また、他社製品との比較試験など、技術データが充実しています。


写真左:With us ゲッター 写真右:捕虫紙ホルダー

捕虫器の寿命

 捕虫器には蛍光灯器具が使用されており、蛍光灯器具の内部には安定器(バラスト)と呼ばれる部品があり「JIS規格」による耐用年限が設定されています。捕虫器は24時間365日使用しますので、消耗も激しく、JIS規格による適正交換時期の目安は3.8年間です。(約8,000時間)
 捕虫器を購入した際は、購入年月日を記録し、3年に1回は設置工事を行った業者に点検を依頼して下さい。※点検されないで長期間使い続けるとまれに落下・感電・火災などに至る場合がありますので、定期的なメンテナンスをお願い致します。

参考資料 JIS C8105-1「照明器具-第1部:安全性要求事項通則」解説より抜粋

 蛍光灯器具の耐用年数を端的に名言するのは困難である。しかし、一般の施設用蛍光灯器具の交換の目安を提示しておくことは、予防保全の立場で維持管理の担当者にとって有益と考え、次に示した。

●電気絶縁材料は使用するに従って化学変化を生ずるので、電気用品取締法の技術基準では、その限界を40,000時間と規定している。照明器具において電気材料の劣化が問題になるものは、安定器、ソケット、電線などである。
●電気用品取締法の技術基準の電気絶縁材料の限界(40,000時間)は、平均的耐用年限と考えられ、実際には部品の製品ばらつきがあり、 30,000時間から摩耗故障期(老人期の故障期間)に入る。
●ソケットや電線の絶縁物も安定器と同様に、使用時間の経過と共に科学的に劣化し、特に絶縁材料のほか、長期使用によりランプとソケット間の接触抵抗が次第に増大するものが発生する。年間点灯時間が1,500時間、3,000時間、5,000時間、8,000時間の使用時間(主な用途区分)及び電源電圧、周囲温度を区分して表1の通り適正交換時期を目安として算出した。

表1 適正交換時期の目安

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