ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第4回

鵬図商事株式会社 企画部 芝生圭吾

出典元:月刊HACCP284号より

「五月蠅い(うるさい)」の語源は五月の蠅(ハエ)がうるさい事から・・・

 ハエ類の発生は5月から急増します。日本には「五月蠅い(うるさい)」という熟語が古くからありますが、その語源は、五月の蠅(ハエ)は、「特にうるさい事」から、当て字にされました。昔から5月にハエの発生が多い事が推測できると思います。今回はちょうど5月号になりますので、食品工場などでよく問題になる「コバエ類」を中心に解説させて頂きます。

コバエ類の生態「ノミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ」

 コバエ類は種に発生源など生態が異なりますので、対策も異なってきます。種を同定する事が重要になってきますので、問い合わせが多い3種の生態を下記に記載させて頂きます。

ノミバエ類 ショウジョウバエ類 チョウバエ類
分類 ハエ目ハエ亜目
ノミバエ科
ハエ目ハエ亜目
ショウジョウバエ科
ハエ目カ亜目
チョウバエ科
写真
体長 約1~3mm 約2~3mm オオチョウバエ約3~5mm
ホシチョウバエ約1~2mm
外見的
特徴
体色は、背面は黒褐色、胸部は黄褐色ないし褐色、腹部は黄色 体色は黄褐色、目が赤い 黒から灰褐色、体表および翅全体に長毛を有している
オオチョウバエの翅はハートを逆さにしたような形をしている。
発生源 腐敗動物質、漬物、堆動物死体、腐肉、生ごみ容器など 腐果実、酒臭、酢、発酵物のある場所 下水溝、浄化槽、など湿度が高く、スカムなど汚泥がある場所
産卵数 1回に30~40個 1回に30~40個 約80~100個
一生の
産卵数
約200個 約500個 約240個
(2~3回に分けて産む)
発生時期 5~9月 4月~10月 5月~10月

飛翔昆虫の月別・種別捕獲数の推移

 下記グラフは関東にある食品工場の飛翔昆虫捕獲数をグラフにしたものです。コバエ類の発生は4月頃から増えだし、種によっては12月頃までよく捕獲されます。捕獲数が多いという事は、発生も比例して多いという事ですので、異物混入の危険性が増しており、注意が必要です。また、種によって発生源と発生のピークが異なる事にも注意を払う必要があります。


図:関東にある食品工場の飛翔昆虫種別・月別捕獲数推移

飛翔昆虫各種の発生ピークはいつか?

 下記グラフから、クロバネキノコバエ、ユスリカは6月、ノミバエ、チョウバエは7月、ウンカ・ヨコバイは9月に発生のピークを迎えている事がわかります。飛翔昆虫各種の発生ピークは概ね同時期となりますが、気温や地域性、工場の立地、構造によっても若干変化します。また、ノミバエなどの発生が減少してくる10月でも、チョウバエの発生が多い事はチョウバエにとって繁殖しやすい環境が維持されている事が推測できます。

飛翔昆虫が繁殖するには理由がある

 害虫が繁殖する為にはいくつかの条件が必要となります。増加には増加の理由、減少には減少の理由が必ず存在します。チョウバエを例にとると、①元々熱帯系の昆虫であり、寒さに弱い。しかし、施設内の温度が一定以上あると年間を通じて発生が見られる。②チョウバエの幼虫である蛆(ウジ)は汚泥など有機質で汚れた水場を好みます。流れのある水域や汚れていない水域では繁殖する事が出来ません。排水・下水・汚水管(槽)などで水が常に流れていない場所などが発生源となる事が多いです。

飛翔昆虫対策の第一歩は定期調査と分析

 コバエ類は体長が数mmと非常に小さい為、目視や聞き取り調査だけでは現場の体感と実際の生息数と異なる事が多く、だいたい体感より生息数の方がずっと多いです。飛翔昆虫を紫外線で誘引する「捕虫器など」で定期的な調査を行う事が必須となります。捕虫器で捕獲出来た虫を調べることによって、その場所の環境を知ることができます。捕れた虫の種類で「問題」を、捕れた虫の数で「(問題の)重要度」を知ることができます。外から入ってくる虫が多く捕まっていれば、虫が外から入って来やすい環境があるため、侵入対策が必要となります。中から発生する虫が多く捕まっていれば、虫が発生しやすい環境があるため、清掃を行い、発生源を取り除く必要があります。どんな虫が捕獲されているかを知ることはとても重要です。また、普段依頼している害虫駆除業者に飛翔昆虫の生息調査報告書を作成して貰ったり、毎月の捕獲数を元に上図のようなグラフを作成してもらうと、何の種がいつ増えるのか傾向が見えてきますので、対象種が増える前に対策を講じるなど、年間での対策を立てやすくなります。(契約内容によっては、有償の場合もあります)

外部侵入の飛翔昆虫対策

 外から侵入してくる虫を100%防ぐ事は非常に難しい事です。侵入してくる虫をいかに捕獲するかを考えましょう。侵入してきた虫は、より外の部屋(できるだけ前室)で捕獲し、異物混入が起こりそうな場所(包装ラインや盛り付け場所等)に近づけないことが原則です。その為、前室の誘引防止対策、侵入防止対策、早期捕獲対策を徹底させる事が重要です。
 捕虫器を設置する事はもちろん、部屋の明かりを蛍光灯から飛翔昆虫が誘引されにくいLEDに変更したり、蛍光灯に紫外線カットフィルムを装着する事は誘引する虫を減らすだけでなく、捕虫器の捕虫効率を高めます。また、ドアやシャッターなどの開閉管理が難しい場合、防虫カーテン、シートシャッター、防虫エアカーテンなどが採用できれば理想的です。

自分達でも出来る外部侵入対策

 飛翔昆虫対策は敷地内で発生させない事と外部の虫を施設内に誘引しない事が重要なので、自分達で出来る事が多々あります。自分達でも出来る対策をチェックリスト形式にしましたのでご活用頂ければ幸いです。

● 敷地内で発生させない対策

チェック チェック内容
側溝にゴミや汚れがたまっていない。
植栽は建物のすぐそばに植えられていない。
植えられている場合は、建物にかからない様に枝が剪定されている。
植栽は定期的に剪定されている。
植栽は虫が付かない様に定期的に殺虫処理されている。
植栽の土壌が必要以上に湿っていない。ゴミや汚れがない。
池がある場合は、定期的に薬剤(IGR)を散布し、虫が発生しない様にしている。
ゴミ置場は出入り口から離れた場所にあり、きれいに清掃されている。

上記対策を怠ると下記害虫などの発生が増える事が多くあります。

チョウバエ クロバネ
キノコバエ
タマカ アブラムシ アザミウマ

● 外部から施設内に誘引しない対策

チェック チェック内容
従業員入口から外に光がもれていない。
入荷場から外に光がもれていない。
出荷場から外に光がもれていない。
窓から外に光がもれていない。
どの捕虫器の光も外にもれていない。

※室内灯をLEDにしていたり、紫外線カットフィルムを使用している場合は問題ない

● 施設に侵入させない対策

チェック チェック内容
従業員入口が開放になっていない。
入荷場が開放になっていない。
出荷場が開放になっていない。
窓が開放になっていない。
換気扇に網戸(メッシュ)がある。

 網戸(メッシュ)は16メッシュ(1mm角)が一般的であるが、防虫的には32メッシュ(0.5mm角)が
理想的です。しかし、目詰まりしやすくなるので、定期的に洗浄する必要があります。また、強度を考えるとステンレス製が理想的です。

● 施設内において、次の部屋に誘引しない対策

チェック チェック内容
従業員入口に捕虫器が設置されている。
従業員入口は前室になっており、作業場へのドアも閉められている。
入荷場に捕虫器が設置されている。
入荷場は前室になっており、作業場へのドアも閉められている。
出荷場に捕虫器が設置されている。
出荷場は前室になっており、作業場へのドアも閉められている。
捕虫計画の元、捕虫器が設置されている。
異物混入が懸念される部屋に捕虫器が設置され、虫の捕獲が無い事を確認している。

上記対策を怠ると下記害虫などの発生が増える事が多くあります。

ユスリカ ヌカカ キノコバエ タマカ トゲハネバエ

内部発生(繁殖)する飛翔昆虫対策

 チョウバエ、ノミバエ、ショウジョウバエなどはどんなに外部侵入対策を行っても、施設内部で繁殖してしまう事が多いので、上記外部侵入対策とは別に、対策を講じる必要があります。内部発生が多い場合は殺虫剤を用いた駆除や高圧洗浄など化学的もしくは物理的対策を講じる必要がありますが、自分達でも出来る事は多々ありますので対策をチェックリスト形式にしましたのでご活用頂ければ幸いです。

自分達でも出来る内部発生対策

● 湿潤環境を清掃して発生させない。

チェック チェック内容
排水溝の蓋が全て開けられる様になっている。
定期的に排水溝の清掃がされている。
排水溝清掃時、蓋も清掃されている。
床に劣化がなく、水も溜まっていない。
器械の下もきれいに清掃されている。
グリストラップがある場合は、きれいに管理されている

※環境にもよりますが、2週間前後で卵から成虫になるため、日常清掃の他に、週に一度は重点清掃を行う事が理想的です。

● 早期に捕獲する

チェック チェック内容
発生源のある部屋では発生場所の近くに捕虫器が設置してある

上記対策を怠ると下記害虫などの発生が増える事が多くあります。

チョウバエ ノミバエ クロバネキノコバエ ショウジョウバエ ニセケバエ

内部発生対策 番外編

 捕虫器には飛翔昆虫以外の虫も捕獲される事がありますので、番外編として紹介させて頂きます。主に湿潤環境で発生するカビや、乾燥した粉などに誘引されます。

● カビ等を清掃して発生させない

チェック チェック内容
カビが見られない
空調機(ダクト含む)内も定期的に清掃されている。

● カビ等に誘引される虫を早期に捕獲する

チェック チェック内容
発生が懸念される部屋には捕虫器が設置してある

上記対策を怠ると下記害虫などの発生が増える事が多くあります。

ヒメマキムシ ハネカクシ チャタテムシ

 

飛翔昆虫対策は自分達でも出来る事があります。

 コバエなど約2週間で卵から成虫になる成長サイクルが早い害虫の場合、気が付いたら急増してしまう事も多くあり、急増してから害虫駆除業者に依頼しても手遅れになりかねない事が多々あります。上記のように自分達でも日常的な点検や清掃によって外部侵入や内部発生を少なくする事が出来ますし、捕虫器などで定期的に生息調査を行い、増えてしまう時期を予測し、増える前に対策を実施する事が重要です。次回は、捕虫効率の高い捕虫器の選び方、正しい設置位置や、殺虫剤を用いた化学的防除方法などについて解説させて頂きます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

  • クリンタウン
  • 虫ナイ

PMPニュース388号(2020年5月)に戻る