ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第1回

鵬図商事株式会社 企画部 芝生圭吾

出典元:月刊HACCP281号より

はじめに

 はじめまして、鵬図商事株式会社の芝生圭吾です。当社はペストコントロール産業の専門商社として、防疫用殺虫剤や資機材を日本全国の害虫駆除業者へ創業から50年以上販売させて頂いております。ペストコントロールは様々な要因によって、発生する有害生物の種類や対策方法が大きく異なる事が多く、何をすれば良いのかよく分からないといった相談がよく寄せられます。そういった皆様の疑問や悩みの解決に少しでもお役に立てるよう、ペストコントロールの概要など基礎知識と、知って得する技術やノウハウ(ペストコントロールの作業内容、生息調査報告書の理解、作業計画と文書化、殺虫剤の有効性と危険性、殺虫剤混入リスク低減の方法、海外でのペストコントロール事例など)について解説させて頂きます。また、気になる事や疑問質問などを私宛にメール頂ければ誌面にて回答させて頂きますので、お気軽に質問をお寄せ頂ければと思います。※お客様が特定できてしまうような情報は全て非公開にさせて頂きますのでご安心下さい。
お問い合わせ先:k-shibo@hohto.co.jp

HACCPとペストコントロールの関係

 HACCPを実施している施設では、前提条件プログラム(PRP)を作成、運用しており、そのプログラム内に「鼠(そ)属、昆虫の防除」が盛り込まれています。対訳CODEX食品衛生基本テキストでもペストコントロールの必要性について言及されています。

 しかし、具体的な防除方法などの記載が殆ど無いのは何故でしょう?
 理由として考えられるのは、ペストコントロールは施設によって、発生する害虫獣の種類や施設の状況が異なる為、施設に合わせオーダーメイドな防除プログラムを作成する必要があります。その為、マニュアル化や概論を解説するテキストなどで具体的事例を挙げる事が、難しくなってしまう要因となっています。

鼠(そ)族、昆虫の防除(別名:防虫防鼠管理、有害生物防除)とは

 鼠(そ)族、昆虫の防除(別名:防虫防鼠管理、有害生物防除など)を英語でPest Control(ペストコントロール)と言います。「Pest」は有害生物を意味し「Control」は防除や駆除を意味しています。有害生物とは、人にとって有害と思える生物全般を指し、一般的には害虫もしくは害獣、害鳥と呼ばれています。代表的なもので、ネズミ、ゴキブリ、ハエ、蚊、貯穀害虫、クロアリ、ハト、ハクビシンなどが挙げられます。

害虫が人に与える被害

 害虫が人に与える被害としては「感染症などの疾病を媒介する。食中毒の病原微生物を媒介する。アレルギー物質の運搬役になる。人に危害を加える。人に不快感を与える。食料を加害する。食品への異物混入の原因となる。」などが挙げられます。その中でもHACCPを実施している施設で特に重要な問題は以下の3点です。

①食中毒の病原微生物を媒介する。
 ハエやゴキブリは食中毒の病原微生物を媒介し、イエバエは腸管出血性大腸菌O157を保菌している事が分かっています。

②食料を加害する。(アレルギー物質の運搬役になる)
 雑食性のゴキブリやネズミは様々な食品を加害し、その後移動しますので、様々な物質の運搬役になる可能性があります。特にネズミが好んで喫食する小麦粉(アレルギー物質)は粉末状なので、体表に付着しやすく、アレルギー物質を運搬してしまう危険性があります。

③食品への異物混入の原因となる。
 独立行政法人国民生活センターの発表資料「食品の異物混入に関する相談の概要 平成27年1月26日」によると、食品の異物混入に関する相談「1,852 件」について、異物の内容別でみると、ゴキブリやハエなど「虫など」が最多で 345 件、次いでカッターや針金などの「金属片など」が 253 件、さらに毛髪や体毛などの「人の身体に係るもの」が 202 件と続きます。こういった統計資料から害虫による異物混入が多い事がご理解頂けたと思います。
 近年はSNSなどで虫の混入被害が拡散され、重大な風評被害に繋がった事例もある事から、根本的な原因解決として「ペストコントロールの重要性」が重要視されてきています。

表1.異物の内容(2014年度受付分、複数回答、下線は本文中に記載があるもの)より

異物の内容(注19) 食品の異物混入  n=1,852
食料品 n=1,656 外食・食事宅配 n=196
虫など
(小計 345 件)
ゴキブリ、ゴキブリの足など 49(2.6) 318(19.2) 27(13.8)
ハエ、ハエの幼虫など 31(1.7)
ゴキブリやハエ以外の虫 265(14.3)
金属片など
(小計 253 件)
針金、釣り針など 93(5.0) 237(14.3) 16(8.2)
ステープラーの針など 21(1.1)
カッター、刃物など 5(0.3)
他の金属片など 134(7.2)
人の身体に係るもの
(小計 202 件)
毛髪や体毛など 148(8.0) 169(10.2) 33(16.8)
歯、歯の詰め物など 27(1.5)
爪、つけ爪(ネイルを含む)など 19(1.0)
ばんそうこう 8(0.4)
(硬質な)プラスチック片など 140(7.6) 127(7.7) 13(6.6)
ビニール、フィルム(テープ類含む)など 87(4.7) 74(4.5) 13(6.6)
紙くず、布繊維くず(スポンジ、たわし含む)など 76(4.1) 69(4.2) 7(3.6)
食肉や魚の骨など 55(3.0) 34(2.1) 21(10.7)
石・砂など 48(2.6) 44(2.7) 4(2.0)
ガラス、陶器片(皿のかけら含む)など 41(2.2) 29(1.8) 12(6.1)
ゴム、ゴム片など 33(1.8) 28(1.7) 5(2.6)
楊枝、割箸などの木片 29(1.6) 27(1.6) 2(1.0)
小動物の死骸、羽根、フンなど 21(1.1) 19(1.1) 2(1.0)
その他・不明 540(29.1) 495(29.9) 45(23.0)

消費者は虫を見たらどう思うか?

 フードサービス店に来店されるお客様の心理について10代~50代の男女100人に実施したアンケート調査を当社が調査会社に依頼した時の結果を下記に記載させて頂きます。
●質問1あなたはハエやゴキブリを見た時にどんな気持ちがしますか?(ひとつだけ)

項目 回答数
気持ちが悪い 76
怖い 18
なにも感じない 6
かわいい 0
嬉しくなる 0
回答者数合計 100

●質問2.食店でハエやゴキブリを見かけたら、そのお店にまた行きますか?(ひとつだけ)

項目 回答数
二度と行かない 48
できる限り他の店へ行く 28
以前ほど行かなくなる 23
気にしないでまた行く 1
回答者数合計 100

 消費者にとって「虫が存在する」という事は絶対に嫌な行為のひとつと言えると思いますが、害虫の発生を「0」にするというのは容易な事ではありません。

害虫獣の発生要因となる環境について

 害虫の発生要因となる環境は、施設の場所と周囲環境、製造している製品、施設の設計、気密性、陰圧陽圧、設備の老朽化など様々な要因が影響しています。そういった要因を一つ一つ検証していく事が、害虫獣の侵入・繁殖予防に繋がります。例えば、シートシャッターの開閉回数と開閉している時間帯を調べてみてください。シートシャッターの開閉数が増えれば害虫の侵入機会も増えてしまいますし、夕方など周囲の明かりが減った時間帯は、蛍光灯などの光に誘引されるハエ類などが誘引されやすくなってしまい、夕方の時間帯に侵入機会が増えてしまいます。

害虫が繁殖する為の条件

 害虫獣が繁殖する為には、一定の条件が揃っている事が必要です。大繁殖してしまう時は繁殖の為の条件が揃っているという事になります。基本的に「餌、水、温度、隠れ家」の内ひとつでも無くす事が出来れば繁殖する事は出来ません。例えば、流し台に残された水たまりをマメにふき取る事で、害虫獣が必要とする「水」を減らす事が出来ますし、什器下部にゴミが放置されていれば、害虫獣の絶好の隠れ家になります。チャタテムシはカビなど菌類と穀粉、有機物などを餌にしますが、カビの発生を抑える事で繁殖を減らす事が出来ます。繁殖する為の条件を完全に無くす事は難しいかもしれませんが、出来る限り改善することでが繁殖を抑える事に繋がる「害虫獣が繁殖しづらい環境」を作り出すことが出来ます。

ゴキブリ1匹見たら100匹いるって本当?

 よく言われる都市伝説「ゴキブリ1匹見たら100匹いる」というのは本当なのでしょうか?
 理論上にはなりますが、計算した所、上記都市伝説は誤りである事がわかりました。
 結論は「チャバネゴキブリ1匹を見たら1年後5,000匹に増える可能性が高い」です。
 一般家庭で良く見る黒くて大きい「クロゴキブリ」の場合、屋内ではなく屋外に生息・繁殖している事が多いので1匹見たからといって100匹いる事は考えにくいのですが、飲食店などに多い「チャバネゴキブリ」の場合です。理論上の計算根拠を以下に示します。
●チャバネゴキブリの寿命は約4~5ヵ月、1個の卵鞘の卵数:40
【第一世代】オスとメスのチャバネゴキブリ 1匹ずつ
【第二世代】メスが一生に産卵する回数5回×卵鞘内の卵数40=1匹のメスから200匹の子孫を残す。
【第三世代】200匹中オスとメスが100匹ずつと仮定、半数が生き残り、半数が死んだ場合
メス50匹×卵鞘数内の卵数40×メスが一生に産卵する回数5回=10,000匹
10,000匹÷2(オス1匹、メス1匹)=5,000匹

ペストコントロール VS 害虫

 上記のように、害虫は条件が揃うと驚異的な繁殖をする事があります。繁殖力を上回る駆除を行う事が出来なければ、結果的に害虫は増加してしまいます。対策として、定期的な生息調査、繁殖原因の特定、物理的に害虫を捕獲する、侵入箇所の閉塞や繁殖しづらい環境整備、殺虫剤を使用する化学的手法など様々な方法を行う必要があります。残念ながら、どの手法もこれさえやれば大丈夫いう事は無く、様々な手法を組み合わせて初めて繁殖力を超えた駆除効果を発揮する事が出来ます。次号以降、その手法やヒントをご紹介させて頂きますので、参考にして頂ければ幸いです。

 

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