クサギカメムシの影響や侵入経路

PCN, 2018
Mathew Davis Ph.D.
Head of Technical Department, Killgerm

 既に侵入が確認されているヒトスジシマカ、オオスズメバチ、ナミテントウムシに続き、次の侵入生物として危惧されるのはクサギカメムシ(学名:Halyomorpha halys 英名:Brown Marmorated Stink Bug 通称BMSM)です。もしかすると発見、報告がされていないだけで、すでに侵入しているかもしれません。 今号では、クサギカメムシがヨーロッパに侵入した場合の影響について考えてみたいと思います。

 2014年には、ロンドン自然史博物館の昆虫学者であるマックス・バークレーとクリス・マフィーがイギリス南部でクサギカメムシが発生した場合に農業害虫、不快害虫として社会に与える影響を想定した記事を執筆しています。

 しかし数年後の2017年に想定が現実のももとなります。Urban Pest Advisory Service(チューリッヒ)のマーカス・シュミットがバーミングハムで開催された第9回都市有害生物国際協議会(International Conference on Urban Pests/ICUP)においてクサギカメムシが スイスで確認されたことを発表し、これがイギリス業界の大きな関心事となります。

クサギカメムシ(BMSM)がヨーロッパに与える影響

 マーカスは不快害虫としてのクサギカメムシの影響について、越冬の為の棲み処を求めて秋口になると大量に屋内に侵入してくるとしています。

 公衆衛生の観点から、クロバエ類やナミテントウムシ同様に大きな影響を与えるとしています。

 スイスで発生したクサギカメムシによるアプリコットやネクタリン(ズバイモモ)、サクラン、ボ、などの果物や庭で栽培されているラズベリーやブラックベリーへの被害を与え、そこから屋内へと侵入してくることが報告されています。チューリッヒ地域で栽培されているトウガラシ類に甚大な経済被害が発生したとの報告もなされております。

 公衆衛生的駆除の観点からするとクサギカメムシはシャッターケース中や通気口に侵入、壁やドア周りにへばりつく不快害虫です。ほかの越冬昆虫同様、冬場の棲み処を求め屋内に侵入してきますが、冬でも暖かい日や春先には活動が活発になり、暖かくなるにつれ活動は更に活発になります。活動ピークは2度あり、見た目に不快なだけでなく、身に危険を感じると強烈で持続性のある悪臭を放ちます。

クサギカメムシ(BMSB)アレルギー

 ムシの放つ臭い(防御の為に分泌される物質)に敏感な人は、クサギカメムシの放つ臭いにより鼻炎、結膜炎などのアレルギーを発症するとのアメリカの報告例があります。特に、ゴキブリやテントウムシなど、ムシの臭いに対する感受性の高い人はアレルギーを発症する可能性が高いといえます。また、ムシの臭いに対する感受性の高い人の場合、潰れたムシに触れたり、直接潰してしまった場合、皮膚炎を発症します。

植物に対する甚大な被害

 アメリカではクサギカメムシによりリンゴ生産に40億円を超える損失が発生しています。世界的には300種を超えるクサギカメムシの宿主となる植物があり、食害や植物に有害な病原体により深刻な被害が発生しています。国や地域によっては重大な被害をもたらす農業害虫です。

侵入経路

 侵入経路の一つとして疑われるのは、観葉植物です。具体的な侵入経路について2017年のICUPにてマーカスが発表した論文によると、スイスのチューリッヒ市と中国の昆明市は姉妹都市提携しており、昆明市は中国庭園をチューリッヒ市に1994年に寄贈しました。1998年に冬場の寒波で割れた屋根瓦の修理が必要になり、北京近郊で製造された新しい瓦をチューリッヒ市は輸入しました。その後、チューリッヒでクサギカメムシが確認され、DNA検査の結果、チューリッヒで確認されたクサギカメムシは中国原産であることが分かりました。侵入経路は修理用の瓦の箱の中で越冬中の成虫が潜んでいたものと思われます。

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