スズメバチ防除における防護服の選択

鵬図商事株式会社 芝生圭吾

 スズメバチ防除はPCOにとって、いまや夏の風物詩ともいえる程多くの依頼があります。日本ペストコントロール協会がまとめた47都道府県ペストコントロール協会より提出された平成26年度害虫相談件数集計報告によるとスズメバチの相談件数は、2005年と2014年を比較すると2.1倍に増加しています。1)

表1.日本ペストコントロール協会に寄せられたスズメバチ相談件数の推移

年度 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 合計
相談件数 4,927 3,838 5,085 7,107 8,591 7,248 8,936 8,046 8,924 10,588 73,290

 厚生労働省が公表している2014年次人口動態調査によると、スズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触による死亡者数は過去10年間の平均で18.9人となっています。2)

表2.スズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触による過去10年間の死亡者数

年次 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 平均
死亡者数 26 20 19 15 13 20 16 22 24 14 18.9

 スズメバチ防除を行うPCOはスズメバチの巣に近寄る必要があり、彼らにとって刺症事故は生死に関わる重大な問題です。刺症事故防止の為にハチ類防護服の着用は必須と言えます。そこで今回PCOの方々がご使用されている代表的なハチ類防護服について調査を行いました。

1.ハチ類防護服の選び方

(1)ハチ類防護服に求められる機能
 ハチ類防護服に求められる機能としては「刺されない事」「毒液から目を保護出来る事」「猛暑や高所など過酷な条件下でも安全に作業出来る事」などがあります。

(2)主な防護服の仕様

商品名 ラプターⅢ おたる8M型 ハチ・ガード
メーカー名 株式会社ディック
コーポレーション
株式会社ミツウマ 小林防火服株式会社
重量 約3.7kg 3.45kg 服5.4kg、フード1.5kg
本体 材質 ナイロン製 白色ポリエステル・
オックスフォード
外側:ゴム引き布
内側:ザイロン、ケブラー
上着
ズボン
上下分離している 上下一体型
(ファスナー止め)
上下一体型(つなぎ)
マジックファスナーで密閉
サイズ フリーサイズ
(身長165cm~185cm)
身長180cm、
ウエスト100cmまで対応
レギュラー、ラージ
頭部 材質 ポリカーボネイト 透明プラスチック 外側:ステンレスメッシュ
内側:透明シールド
手袋 材質 豚革 牛革製 本体と同じ素材を使用
長靴 サイズ 付属無し 26cm、27cm 25.5cm、26.0cm、27.0cm
白(ハチが認知しにくい) 白(ハチが認知しにくい) 銀(ハチが認知しにくい)
納期 1週間前後 1週間前後 約4週間
定価(税抜き) オープン 130,000円 175,000円
商品写真

(3)主な防護服の特長

本体の特長

ラプターⅢ 生地の表面に蜂が止まりにくい特殊加工ナイロン製
蜂の針を通しにくいPVCコート
生地が肌につきにくいポリエステルメッシュ
おたる8M型 通気性のある特殊生地を使用
生地の表面に蜂が止まりにくい特殊コーティング処理
蜂の針を通しにくい特殊な編み方と厚み
ハチ・ガード 蜂の針が貫通しない為の3層構造
外側:アルミ粉末をゴムに混ぜたゴム引き布
内側:世界一の強度を持つ繊維ザイロン、高強度の繊維ケブラー

頭部の特長

ラプターⅢ 視界面:従来より広く設計している
顔とレンズの間隔を広げ、呼吸による曇りを軽減している。
おたる8M型 視界面:従来より広く設計している。
頭部:狭所や柱等の障害物にも当たりずらいよう丸く改良
ハチ・ガード 視界面:通気性の良いステンレスメッシュを使用
頭部:労働省やJIS認定を受けているヘルメットを採用

手袋の特長

ラプターⅢ 豚本皮2枚の間に突き刺し防止の特殊シート2層の4層構造
おたる8M型 特殊撥水加工で雨天時の作業を容易にしている。
ハチ・ガード 本体と同じ素材(ゴム引き布、ザイロン、ケブラー繊維使用)
マジックファスナーによる完全密閉

暑さ対策

ラプターⅢ 4個の保冷材を収納可能なポケット付きベストが同梱されている
おたる8M型 通気性を保つ特殊生地を採用
ハチ・ガード 冷却材を同梱(服内部に冷却剤を収納するポケット有り)

2.ハチ類防護服と併用する事でより安全に防除が出来る用品

 ハチ類防護服を着ていても、防護服の種類や状況によって、刺症事故が発生する事がまれにあります。例えば、肘や膝などの関節部を曲げた際に防護服と肌が密着し、スズメバチの毒針が肌まで到達する事が挙げられます。より安全性を高めて防除する為に役立つ用品をご紹介します。

商品名:ハチガードウェア
概要:ハチ類防護服の中に着用するインナーとなっており、防護服と肌に8㎜以上の隙間を確保する事でスズメバチの毒針が肌まで届かないようにして、刺されるのを防ぎます。

商品名:エアロング
概要:エアゾールを装着する延長棒で、遠い位置からスズメバチ駆除エアゾールの噴射ができます。地面に立った状態でスズメバチに駆除用エアゾールの噴射ができますので、はしごや脚立に乗ったままエアゾールを噴射する作業と比べ、転落の危険性が無く、より安全と言えます。延長棒の長さは伸長時で3.6m、5.4m、7.0mの3種類があります。

※注意※当画像は海外メーカーがプロモーションの為に防護服を着用せずに使用した写真になっておりますが、実際の防除時はハチ類防護服を必ず着用して下さい。

商品名:インセクトポイズンリムーバー
概要:スズメバチに刺された時に毒を吸い出す応急処置用の吸引機です。
※当商品は応急処置用です。その後、必ず医師の診察を受ける事をお勧めします。

3.防除を行う人は事前に蜂毒アレルギーを検査しましょう

 蜂に刺された事が無い人でも、1回の刺症でアレルギー反応が強くでてしまう可能性があります。スズメバチ防除を行う方は、事前にハチ毒抗体検査を行いましょう。
【蜂毒アレルギー診察可能な医療機関】
 アナフィラキシー補助治療剤エピペン®注射薬のメーカーであるファイザー株式会社は[アレルギー・アナフィラキシー]に関する疾患啓発を目的に情報提供サイトを運営しています。 アナフィラキシーってなぁに.jp (URL: http://allergy72.jp/ )
 同サイトでは、蜂毒アレルギーを診察可能な医療機関を検索出来るようになっており、日本全国で879件の医療機関が蜂毒アレルギー診察可能と登録されています。
※医療機関の選択や受診にあたっては、ご自身でご判断いただくか、またはかかりつけ医がある場合、まずかかりつけ医にご相談されることをお勧めします。

4.アナフィラキシーに対する緊急補助治療薬(エピペン®注射薬)について

 スズメバチに刺された後、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシーの症状を一時的に緩和し、ショックを防ぐ為の補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)があります。エピペン®注射薬は、医師の診察のうえで処方を受けることができます。処方は、その安全性や有効性などについて事前に講習を受け、登録された医師のみが処方できることになっています。

5.おわりに

 ご紹介したハチ類防護服や役立つ用品はスズメバチ防除を安全に作業する為に必要な工夫が多く施されています。自社の施工方法に合わせたハチ類防護服や用品を防除シーズン前に予め揃えて頂く事が、安全に防除を行う上での手助けになると考えています。スズメバチの刺傷事故から守る為にも、ハチ類防護服を必ず着用して頂く事をお願い致します。

6.引用・参考文献

  1. 日本ペストコントロール協会機関誌No172 2015年10月号 p.45
  2. 厚生労働省 「2014年次人口動態調査 下巻1-2 死亡数 性・死因(死因基本分類)別 (2) ICD-10コード V~Y、U」よりX23スズメバチ,ジガバチ及びミツバチとの接触 を一部抜粋して作表

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