サニテーション管理を省力化する画期的なIPMツール「Green Drain」の実証レビュー

奥村防蟲科学株式会社 代表取締役 奥村敏夫

 Green Drain(グリーン・ドレイン)は厨房やトイレ、浴室等の排水口に取り付ける、いわば ”逆止弁” である。外観は、円筒上の本体の周囲にひだ状のゴムが3列に巻いている。内部には薄いシリコン製の逆止弁があり、シンプルながらもなかなか作り込まれた製品だと思った。

 6月上旬のある日、鵬図商事㈱の服部氏より一報が入った。「奥村君に見てもらいたいものがあるけど時間もらえない?」と。新大阪の喫茶店で待ち合わせ、久しぶりに再開。挨拶もそこそこに、説明もなく、小さなボール箱に入った黒い物体がテーブルの上に置かれた。「何ですか、これ?」「Green Drainて言うんだけど、現場で試してくれない?」そんな経緯から自身の管理する物件で検証し、この製品がもつ ”隠された魅力” を探究することになった。

 期待を背負ったGreen Drainを、まずは気さくに何でもお願いできるスナックに持ち込んでみた。ここには店舗の改装を行った厨房にありがちな“遊び排水管”が複数存在している。管の切り口は店主が布テープで塞いでいたが、経年劣化で剥離しておりフタとしての機能はもはや果たしていない。そんな遊び排水管からは、夜な夜なゴキブリやハサミムシ、そしてネズミまでもが這い出してくる。使用されていない管の内部はすっかり乾燥し、管の内壁に付着したままのスカムは彼らの格好の足場となり管内クライミングを容易にしている。意外にもこの遊び排水管からのゴキブリ、ネズミ等の屋内侵入は多いのである。管を金網や防鼠パテで塞いでいるケースもあるが、一度封鎖するとまず取り外して洗浄することはなく、再び使用されることの無いのが実状である。また、それらも経年劣化で腐蝕したり硬化して隙間が空いたりするため、いずれは取り換えなければならない。封鎖できているように見えて実はできていない…これは管理する上で非常にたちが悪い。そこで、これら遊び排水管にGreen Drainを設置してみることにした。これが店主が金網を詰めていた遊び排水管である。

 無造作に丸められた金網が適当に突っ込まれている。これが排水管の詰まる原因ではなかろうか…。早速、Green Drain の中で最も小さいGD102を取り出し、排水管に挿してみた。おぉ!なかなかのフィット感である。本体側面の足の長い三列のゴムが排水管の内壁をとらえて密着し滑り落ちることは無い。いとも簡単に遊び排水管の封鎖が完了。定期点検するにしても清掃含めて1分以内に完了する。逆止弁を確認するだけで各種衛生動物の侵入を容易に防ぐことができるのである。これは素晴らしい。

 続いて、厨房シンク下の排水管にも同様に設置してみることにした。こちらは大量の水を流す“現役”の排水管である。店主が布テープを巻いて隙間を封鎖しているが、お世辞にもきれいとは言い難い様相を呈している。

 かねてから店主がこの排水管の洗浄ができないのを気にしていたため、このたびのGreen Drainの設置に暗黙の期待が重く圧し掛かる。そう、店主は私のすぐ隣で作業の一部始終、固唾を呑んで見ているのである。店主が何重にも巻いて封鎖した布テープを剥ぎ取りGreen Drain GD102を設置するもシンクからの排水パイプがあり、遊び排水管の様に挿すだけとはいかない。恐る恐る排水管の奥に押し込んでみた。

 するとどうだろう、排水管まわりが見違えるようにすっきりしたではないか!これには店主も大喜びで、ひと手間で清掃環境が整ったことに驚きを隠せない様子であった。水を流してみると一般的な流水量では何の問題もない。蛇口を全開で流し続けるとオーバーフローしてしまうので、多少の注意は必要だ。シリコン製逆止弁の許容範囲を超えてしまうようだ。
 Green Drainは逆止弁がついているゆえに流量に若干の影響がある。特に一番小さなGD102はその影響が顕著に現れる。シンクの排水を一箇所に集約したり大量の水を流したりする排水管には不向きなようである。一つ見つけたGreen Drainの短所である。冷蔵庫やコールドテーブルのドレン排水管であれば全く問題なく機能するため、適した設置場所を選ぶことで充分に活用できそうである。

 管理物件の一つに、店内に設置されたグリーストラップから続くグレーチングよりドブネズミとワモンゴキブリが這い出してくる飲食店がある。

 毎月のワモンゴキブリの捕獲は猛烈に多く、防鳥ネットを駆使しての物理的な侵入対策を施しているが、抜本的解決にはなっていないのが現状である。

 調理残渣を絶妙に通すことができる4mm目のカラス対策用 防鳥ネットは、ワモンゴキブリなどの大型ゴキブリを通さないため機能性は秀逸ながらグレーチングの清掃時には外して再設置しなければならず、これが意外と時間を要し、また、清潔に保つのが難しい。さらに、ドブネズミに度々食い破られるため、防鼠金網とセットで設置しなければならず何かと手間とコストの掛かる難物件なのである。

 そこでドブネズミとワモンゴキブリの侵入ルートを改めて確認し、グリーストラップの先にある汚水マンホールにGreen Drainを設置してみることにした。直径30cmの汚水マンホールの蓋を開けると三方に分岐する大型の排水管がある。グリーストラップに繋がる排水管にGreen Drain GD35を水の流れる方向を確認しつつ慎重に設置した。

 Green Drainは垂直方向に設置するのが基本だが、大型の開口部を備えるGD35であれば、水平にも設置できる。

 結果は良好で翌月からワモンゴキブリだけでなくドブネズミの侵入もピタリと収まり、さらにグレーチングから湧き上がる汚水の臭気も激減した。Green Drainの水平設置により逆止弁が開かず排水管内の水位の上昇が予想されたが特に問題なく、グリーストラップからの少量の水流にも逆止弁は開いており、いとも簡単に数々の問題が解決できた。毎回、施工時間を費やしてきた防鳥ネットと防鼠金網はこの日を境に取り外し、Green Drain一つで劇的に衛生環境が改善し管理が容易になった。

 続いてGreen Drainで最も大型のGD104の設置ができる物件を見つけた。ワモンゴキブリが毎日のように壁体内を歩き、夜な夜なカサカサと壁の中から音がするという集合住宅である。この物件は飲食店だった店舗を基礎のみ残して解体し、跡地に学生用アパートとして建てられたものである。驚くことに厨房の排水系もグリーストラップも汚水マンホールも当時のまま床下に残されており、さらに恐るべきことに一箇所も封鎖されていないのである。当然ながらグリーストラップの水封式トラップは水が蒸発して機能しておらず、そのままワモンゴキブリの温床となっている汚水マンホールに直結している。汚水の臭気も尋常でなく部屋を閉め切ると部屋中に充満するため、年中換気状態で過ごさなければならない。せめてもの救いになればとワモンゴキブリが大量に繁殖している汚水マンホールを開けGreen Drainの設置を試みた。わずかに開いた鉄の蓋から茶色い集団が右往左往と走り回るのが見える。おびただしい数のワモンゴキブリがマンホール内を占拠していた。まずはこの邪魔者を排除すべくサフロチンMCを隙間から噴射注入した。

 湧き上がる汚物の臭いに耐えながら、部屋へと通じる排水管にGreen Drain GD104を設置した。

 取り付ける場所にもよるが、設置作業自体は実に簡単である。その後、壁から聞こえるワモンゴキブリの足音は止まり、同時に汚水臭も激減した。部屋に染みついた汚水臭はクレベリンで消臭すれば完了である。何ともスマートなゴキブリ対策ではなかろうか。

 Green Drain、この一枚のシリコン製逆止弁を備えた漆黒の物体一つでネズミだけでなくゴキブリ、チカイエカ、ノミバエ、チョウバエ、ハサミムシの侵入を防ぎ、さらには雑排水や汚水の不快な臭気をも止めることができる。また、管理が簡素化されることで物件当たりの利益率は向上する。実に画期的な製品である。Green Drainは、様々なサービスの展開を予感させる潜在能力の高いIPMツールである。是非一度、手に取り、その作り込まれた造形と機能を直に感じて頂けたら幸いである。きっとこれまでに感じたことのないワクワク感が溢れ出すに違いない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

  • クリンタウン
  • 虫ナイ

PMPニュース354号(2016年10月)に戻る