ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第23回

鵬図商事株式会社 企画部 芝生圭吾

出典元:月刊HACCP303号より

世界最大のペストコントロールイベントがオンライン開催されました。

2020年10月13日~16日に全米ペストマネジメント協会(National Pest Management Association)が主催する、世界一参加者が多いペストコントロールイベント「Pest World」が開催されました。Pest Worldは今年で87回目となりますが、コロナ禍の影響により、初のオンライン開催となりました。大会では60を超えるオンライン講義、100社を超えるオンライン商品展示、様々なテーマについて議論するWEB会議などが催されました。今号では、PestWorldで実施された講義の中から衛生管理に関連する講演「Your Guide to Pest Control in Audited Food Facilities」についてご説明させて頂きます。前半はSafe Quality Food Institute社のKristie Grzywinski先生による「食品製造施設でのSQF審査時によく見られる、ペストコントロールの不適合ポイントについて」後半はアメリカ大手害虫駆除会社(PCO)RentoKil社のNancy Troyano博士による「FSMA対応食品製造施設でのペストコントロールのポイント」についてです。

写真左:Pest Worldの様子        写真右:講演タイトルと講師

SQF審査時に見落としがちなペストコントロールの不適合ポイント

講師:Kristie Grzywinski 所属:Safe Quality Food Institute
SQFとは、米国のFMI(Food Marketing Institute:食品マーケティング協会)が所有・管理する、一次生産から加工・輸送・流通までのフードチェーン全体を対象とした食品安全・品質管理の認証規格です。講師を務めるKristie Grzywinski氏はSQFを運用するSafe Quality Food Institute(以下、SQFI社)に所属しています。
SQF規格でのペストコントロールに関係する内容はモジュール11「食品安全の基礎 – 食品加工における適正製造規範」の「11.2.7.1~4 埃、ハエ、害虫の防御」「11.2.12.1~9 有害生物の予防」に記述されています。ペストコントロール関係の項目の不適合の割合は右図の通りです。不適合が多かったSQFコード毎にポイントを下記に記載させて頂きますので、自社でも同様のミスが発生していないか、確認してみて下さい。

「11.2.7.1~4 埃、ハエ、害虫の防御」で不適合が多いポイント

【SQFコード 11.2.7.1】基準文書 (1
屋外に面した窓、換気口、ドア、およびその他の開口部はすべて、閉じられているときに効果的に密閉され、埃、害虫、その他の 有害生物を防御するものとします。

【不適合例】

  • ● ロールアップドア、シートシャッターの下隅に隙間がありました。
  • ● 屋外に通じるドア・扉にひどい損傷、隙間がありました。
  • ● 窓の周りに約25匹の死んだハエといくつかのクモの巣を観察しました。
  • ● 加工室の排気ファンのルーバーが汚れており、電源を切った際、完全に閉じませんでした。
  • ● 排気ファンにスクリーン(フィルター)が設置されていませんでした。

【SQFコード11.2.7.3】基準文書 (1
食品取り扱いエリアで製品、人員、トラックアクセスのために使用される頭上ドックドアを含め、屋外に面した窓は、下記の方法の少なくとも1 つまたは組み合わせによって、ハエを防御するものとします。
i. 自動閉鎖装置、ii. 効果的なエアカーテン、iii. 防虫スクリーン、iv. 防虫設備、
v. ドッキングエリアのトラック周りに適切なシーリング

【不適合例】

  • ● 緑豆を廃棄するゴミ箱は適切な方法で密封されておらず、ハエの発生が観察されました。
  • ● ドックドア下部に隙間がありました。
  • ● ドッキングエリア(荷捌き場)の衝撃吸収ゴムが破損していました。
  • ● エアカーテンが作動していませんでした。

「11.2.12.1~9有害生物の防除」で不適合が多いポイント

【SQFコード11.2.12.1】基準文書 (2
有害生物の予防に関する方法および責任は、文書化され、効果的に実施されるものとします。施設、その周囲、保管設備、機械および機器は、廃棄物や蓄積した屑がないように管理するものとし、これにより有害生物や害虫をおびき寄せないようにする。

【不適合例】

  • ● 同社には、現在、鳥の営巣箇所となりえる古い機器やがれきのある「ジャンクエリア」があります。
  • ● 害虫駆除業者(PCO)によって報告された問題に対する是正措置の記録(文書)がありませんでした。
  • ● 外部の積み下ろしドックエリアを監査している間、鶏肉などの食品廃棄物、フライドポテト、ファーストフードのパッケージなどが密封されていないゴミ箱内で発見されました。
  • ● オートミール製造装置にハエなど飛翔昆虫の局所的な群れが発見されました。

【SQFコード11.2.12.4】基準文書 (2
有害生物プログラムは以下の条件を満たすものとします。

i.
有害生物の予防プログラムの開発、実施、維持の方法および責任を説明する
ii.
殺虫剤使用の目的で有害生物の目撃情報を記録し、有害生物の活動頻度の傾向を示す
iii.
有害生物を防ぐために用いた方法を概説する
iv.
有害生物の排除方法を概説する
v.
害虫の状態を確認する頻度の概要を記す
vi.
設定するベイト剤ステーションの識別、位置、番号、タイプをサイトマップに含む
vii.
使用された化学物質を列挙する(該当する当局による承認を必要とし、安全データシート(SDS)を利用可能とします)
viii.
ベイト剤管理プログラムと、ベイト剤ステーションに接触してしまった場合の対処方法を、スタッフに周知する方法を概説する
ix.
有害生物および害虫の管理用化学物質およびベイト剤の使用について、スタッフの認識の要求事項と、使用のトレーニングを概説する
x.
プログラムの効果を測定して、対象の有害生物の排除を確認する

【不適合例】

  • ● 審査時に生息調査の報告書がありませんでした。
  • ● 捕虫器の過去半年間の調査結果、保守記録が不完全でした。
  • ● 調査トラップ、ベイトステーション(毒餌箱)の配置を記録した間取り図が最新の状態に更新されていません。

【SQFコード11.2.12.5】基準文書 (2
有害生物の活動の検査は、トレーニングを受けた人員が定期的に行うものとし、有害生物が存在する場合は適切な処置を行うものとします。

【不適合例】

  • ● 建物外周に設置したベイトステーション(毒餌箱)の多くで餌が無くなっていました。
  • ● 調査トラップ、ベイトステーション(毒餌箱)の配置が、報告書と間取り図で異なっていました。
  • ● 調査トラップ、ベイトステーション(毒餌箱)、捕獲罠、捕虫器の生息調査報告書に記載漏れがありました。
  • ● 報告書を確認した所、実施した調査、作業が全て文書化されていませんでした。

FSMA対応食品製造施設でのペストコントロールのポイント

講師:Nancy Troyano博士、所属:Rentokil
Rentokil社は英国に本社を構え、世界80ヵ国以上でサービスを提供している大手害虫駆除業者(PCO)です。米国内の営業だけでも、330箇所の営業所を持ち、売上も全米第3位(年商9億5,000万ドル)の大手PCOです。講師のNancy Troyano博士は同社のトレーニングディレクターを務められています。

PCOにも求められるFSMAの対応

米国では2011年にFSMA(食品安全強化法Food Safety Modernization Act)が制定されました。FSMAは毎年または数年に1度のペースで大幅な更新が実施され、食中毒への「対応」から「予防」に焦点を移しています。予防とは予測する事を意味します。害虫の発生、侵入を防ぐ為には、将来の侵入がどこで起こるかもしれないかを予測する事が出来なければなりません。どのように予測しますか?長年の勘や占いではなく、科学的根拠に基づいた予測を顧客に提供しなければなりません。先ほどのKristie Grzywinski先生の講義でもありましたが、生息調査などの記録不備は意外と多く発生してしまいます。記録が無ければ、科学的根拠に基づいた予測は出来ませんし、過去は取り戻す事が出来ません。当社がFSMA制定から最も力を入れているのは、記録不備を無くすために、ITを活用する事です。今回は当社が提供しているIT活用方法をご紹介させて頂きます。

文書化作業の負担が増大

害虫の発生は気温など環境条件による影響を多く受ける為、生息調査時に日付、温度、湿度などの情報を収集する方が予測の精度が向上します。昔はPCOもしくは施設の管理者が出来るペース(月に1回)などで生息調査を実施していましたが、近年は駆除作業して終わりではありません。必ず事前計画、生息調査、駆除作業、検証という工程が必要です。PCOは駆除作業と同じ位の時間を報告書作成など文書化作業に費やしており、効率的なデータ収集の必要が出てきました。生息調査の記録、害虫の駆除も重要な事ですが、私達が最も力を入れなければいけない事は、現在の害虫発生状況から将来を予測し予防策を実施する事です。生息調査は不備なく効率的に記録する事が求められます。また、調査頻度が高いほど、発生原因の解明がしやすい事が分かってきました。IT/IoTを活用した生息調査を実施すれば、毎日の発生状況、温度、湿度などが簡単に把握する事ができます。

IT/IOT活用事例

  • ● QRコード、バーコード
    調査トラップ、毒餌箱の設置先に施設名、設置場所、Noなどの情報を予めQRコードに埋め込み、印刷物を掲示しておくだけでも、入力ミスを減らし作業効率を良くします。米国では、調査時にQRコードを読み込み、発生状況を入力するだけで、生息調査及び報告書作成が簡単に出来るソフトが上市されており、普及しています。
  • ● 遠隔モニタリング装置(ネズミ用)
    最近は施設のオートメーション化(自動化)が進んできている為、現場担当者による害虫目撃情報を集めるのが難しくなってきました。毒餌箱に無毒餌を設置する生息調査などへの依存が高まっています。そこで、ベイトステーション(毒餌箱)にネズミの侵入を検知するセンサーや餌の喫食状況を撮影するカメラを搭載し、インターネットに接続する事で、24時間365日モニタリングする事が出来るようになりました。ネズミの活動を検知するとPCOに活動アラートが送信されます。
         
    写真左:QRコード            写真右:遠隔モニタリング装置
  • ● 電子ログブック
    施設担当者とPCOで現場の害虫発生状況などを共有する専用アプリやWEBサイト(パスワード付)も需要が高まっています。生息調査の結果、作業計画書、現場間取り図、予め決めた害虫発生時の対応策、使用する殺虫剤のSDS(安全データシート)、PCOからの改善提案と実施状況などの情報が保管されています。

IT/IOT活用によって得られた事

IT/IOT活用はSQF審査時に不適合となる記録不備を防ぐだけではありません。電子ログブック一つとっても、今までは紙の報告書を提出していましたが、電子化によりファイリングも不要となり、欲しい情報がいつでもすぐに探せます。今までの害虫生息状況の集計も簡単に行えます。施設担当者とPCOは害虫の発生予測と対策に集中する事が出来るようになりました。IT/IOTの活用は初期投資が多く必要になりますが、作業効率を高め、予防策に集中する事が出来るので、結果的にコスト削減に繋がり、多くの食品製造施設から支持を集めています。

引用・参考文献

1)製造のSQF食品安全コード 第8版,P76,2017, Food Marketing Institute.
2)製造のSQF食品安全コード 第8版,P77,2017, Food Marketing Institute.

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