ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第21回

鵬図商事株式会社 企画部 芝生圭吾

出典元:月刊HACCP301号より

臭いムシ「カメムシ」の季節到来

臭いムシ「カメムシ」は秋から冬にかけて発生が急増する害虫です。日本では臭いムシというイメージが強いかもしれませんが、農作物を荒らす害虫として、日本のみならず世界中で何百億円もの経済被害が発生しています。2018年には、日本からニュージーランド向けの自動車、機械を積んだ多くの船舶においてクサギカメムシの発生が確認され、ニュージーランドへの入港を拒否され、何十億円もの経済被害が発生しました。信じがたい事実ですが、臭い小さな虫が何十億、何百億円もの経済被害が発生させています。また、日本では、北海道、東北、北陸などでの発生が顕著であり、発生が特に多い場所では、民家や旅館の外壁に大量に付着しているのを良く見かけます。今号ではそんな臭いムシ「カメムシ」の生態、対策についてご説明させて頂きます。

カメムシ類の生態

● カメムシ類の成長史
カメムシ類は「蛹」にならない不完全変態の昆虫の為、卵から孵化した幼虫が脱皮を繰り返し、成虫になります。4月頃から繁殖期となり、葉裏などに産卵します。約6日~7日で孵化し、幼虫は脱皮を繰り返しながら成長し、約45日後には成虫になります。成虫の寿命は約1年です。9月下旬から越冬に備え、集団飛来します。飛来後は暖かい場所を求め民家などへ侵入するようになります。12月頃から成虫は冬眠し、翌年3月頃から活動を再開します。

● クサギカメムシの飛来時期は地域によって異なる
カメムシの集団飛来は気温の影響を受けますので、地域によって時期が若干異なります。飛来が開始されるのは、最低気温15度以上、最高気温25度以下、飛来のピークは最低気温10度前後の小春日和です。秋田県と神奈川県の平均気温統計を例にすると、秋田県では9月中旬に飛来開始しますが、神奈川県では10月中旬に飛来開始と地域によって異なります。

● カメムシは何故臭い?
カメムシは敵の攻撃など外部からの刺激を受けると、強烈な悪臭を放つ分泌液をだします事で外敵から身を守っています。しかし、カメムシの悪臭(分泌液)は、カメムシにとっても有害で、密封された容器にカメムシを入れ、悪臭を発生させると自らも失神、放置すれば死んでしまう事もあります。分泌液は、ヘキサナールもしくは、トランス-2-ヘキセナールと呼ばれる成分が主であり、消防法上では第4類危険物 第2石油類に該当する刺激の強い物質です。皮膚が弱い方やアレルギー体質の方が触れるとまれにアレルギー反応を起こす事がありますので、直接触れないように気を付けましょう。分泌液に触れてしまうと臭いが中々取れないのですが、分泌液は油に溶けやすい性質の為、界面活性剤が入っている食器用洗剤で手を洗うと簡単に臭いを取る事が出来ます。

代表的なカメムシ類

カメムシとはカメムシ目(半翅目)に属す昆虫で、世界で約25,000種、日本では約800種が分布していますが、その中で被害相談が多いのは下記4種となります。

①クサギカメムシ 画像引用2)
体長約13~18mm、北海道を除く日本全土に分布し、シソ科の落葉小高木である臭木(クサギ)によくいる事からクサギカメムシと命名されました。果樹全般、クサギ、ハンノキ、大豆、麦などを吸汁します。家屋内によく浸入する種です。
②スコットカメムシ 画像引用2)
体長約10mm、日本全土に分布し、イギリスのカメムシ学者J.Scott氏に因み、スコットカメムシと命名されました。ハンノキ、ナラ、マユミ、キリを吸汁します。家屋内によく浸入する種です。
③マルカメムシ
体長約5mm、北海道を除く日本全土に分布しています。マメ科植物、クズ、ハギ、ダイズ、ウツギを吸汁します。家屋への侵入は比較的少ないです。
④チャバネアオカメムシ
体長約10~12mm、日本全土に分布しています。灯火に大量飛来する習性があります。サクラ、クワ、ナシ、カキなどを吸汁します。家屋への侵入は比較的少ないです。

カメムシ類の防除方法

害虫防除において発生源に対策を実施する事はとても重要な事です。しかし、カメムシ類の発生源は、侵入箇所である民家・旅館などの近くでは無く、少し離れた林や森などから集団飛来してくる事が多い為、発生源対策が出来ません。その為、侵入予防と侵入後の駆除しか方法がありません。しかし、侵入後では、家屋内まで侵入した個体しか駆除出来ませんし、駆除後も建築物内部に潜伏している個体が続々と侵入してしまいます。その為、侵入予防が最も重要になります。

● 防除に適切な時期はいつか
カメムシは集団飛来後、すぐ室内に浸入するのではなく、一旦建築物内部に潜伏(約3週間~約2か月)します。そして更に気温が低下すると、室内に侵入してきます。その為、室内侵入に気づいた時は既に建築物内部に潜伏されています。そこから侵入予防を実施しても遅いのです。侵入予防に適した時期は集団飛来の2週間前がベストです。
● カメムシはどこから侵入するのか?
集団飛来時、壁面などに付着しているのですが、その後風の流れがある場所(窓サッシの水抜き穴、通風口、換気口、戸袋)などに移動し、3~4mmの隙間があれば侵入してきます。特に窓サッシの水抜き穴は代表的な侵入箇所です。
          
写真左:窓サッシ下部の水抜き穴 写真中:通風口      写真右:換気口
● 侵入予防の方法
本来ならば侵入箇所を塞いでしまえば、侵入予防出来るのですが、水抜き穴や通風口、換気口を塞いでしまうと、生活上の不都合が生じてしまいます。その為、侵入箇所及び、飛来後付着する壁面への殺虫剤散布が効果的です。但し、殺虫剤なら何でも良い訳ではありません。カメムシは殺虫剤が効きにくいので、カメムシに効果のある事が確認されている殺虫剤を使用しましょう※理由とオススメ殺虫剤は後述します。
①侵入箇所への殺虫剤散布
侵入箇所は僅か3~4mmの狭所なので、エアゾールタイプの殺虫剤が便利です。
窓サッシの枠部分、水抜き穴などの隙間に注入します。通風口・換気口は、口内に注入し、通風口・換気口周囲15㎝位の範囲にも散布しましょう。
   
②壁面への殺虫剤散布
カメムシの集団飛来時などは壁面に付着する事が多く、そこから侵入箇所に移動する為、壁面にも殺虫剤を散布しましょう。侵入箇所よりも広範囲になる為、水性乳剤などを使用する事がオススメです。
  
● 室内侵入後の駆除方法
室内に侵入してしまった場合は、殺虫剤を非常に細かな霧状に散布する空間噴霧(ULV処理)を行います。侵入箇所が明らかな場合は、前述の殺虫剤を侵入箇所に注入もしくは散布を行います。

実は殺虫剤が効きにくいカメムシ

● 何故カメムシには殺虫剤が効きにくいのか?
カメムシは自らが発する分泌液から身を守る為、飛散させた液が体内に浸み込まないよう、体表が厚いセメント層で保護されています。セメント層の保護は殺虫剤に対しても同様です。カメムシの腹部と背部にそれぞれ殺虫剤を散布し、致死するまでの時間を比較すると、体表が厚い背部は腹部と比較して16倍もの長い時間を要します。カメムシを見かけた時は腹部に殺虫剤を散布するようにしましょう。
● カメムシに効果的な有効成分は何か?(3
殺虫剤が効きにくいカメムシに対して効果が認められる殺虫剤の有効成分は、渡辺(1994)は「家屋侵入性カメムシ4種に共通して効果が認められたのはピレスロイド系殺虫剤であり、とくにシフェノトリン水性懸濁剤が速効性、残効性ともに優れていた.ついで,カーバメイト系のプロポクスルであった.有機リン系の3種殺虫剤は家屋侵入性カメムシに対して,仰天・殺虫効果は低かった.」と述べています。

カメムシ防除にオススメの殺虫剤

前述のようにカメムシは殺虫剤が効きにくい性質を持ちますが、効果的な有効成分も判明しています。そこで、カメムシ防除にオススメの有効成分を下記にご紹介させて頂きます。

最も効果的な有効成分「シフェノトリン」を配合した隙間処理に便利なエアゾール

前述のカメムシに対して最も効果が認められた有効成分「シフェノトリン」を配合したエアゾール剤です。2Wayノズルで壁面など広範囲への散布と隙間の隅々まで注入しやすくなっています。

商品名 カメムシコロパー
メーカー名 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
有効成分名 シフェノトリン、イミプロトリン(ピレスロイド系)
用法・用量 窓枠、サッシ、サッシ孔、換気孔等に噴霧塗布(カメムシの侵入防止)または直接噴霧

紫外線に強いので、壁面への散布に最も適している水性乳剤

カメムシが飛来・付着する壁面は直射日光が当たる場所が多く、直射日光の紫外線は殆どの殺虫剤の分解を促進してしまいます。カメムシに効果的な有効成分であるピレスロイド系殺虫剤の中で、紫外線による分解に強い「シラフルオフェン」を配合した水性乳剤です。

商品名 カメムシ用キンチョール乳剤
メーカー名 大日本除虫菊株式会社
有効成分名 シラフルオフェン、フェノトリン(ピレスロイド系)
用法・用量 10~20倍に希釈して家屋の外壁や窓枠に50~100mL/㎡噴霧する

人体への安全性が非常に高い、空間噴霧(ULV)専用剤
家屋内に殺虫剤を散布する際は、人体の安全性が最も気になる点だと思います。有効成分であるフェノトリン(ピレスロイド系殺虫剤)は人体に対しての安全性が非常に高く、優れた速効性と致死効力を併せ持った殺虫剤です。

商品名 金鳥ULV乳剤S ※第2類医薬品
メーカー名 大日本除虫菊株式会社
有効成分名 フェノトリン(ピレスロイド系)
用法・用量 原液:1㎥あたり0.4mL(高さ2.5mとして床面積1m2あたり1mL)
2倍:1㎥あたり0.8mL(高さ2.5mとして床面積1m2あたり2mL)
4倍:1㎥あたり1.6mL(高さ2.5mとして床面積1m2あたり4mL)

                                                                 

写真左:カメムシコロパー、写真中:カメムシ用キンチョール乳剤、写真右:金鳥ULV乳剤

引用・参考文献

1)上村募.原色ペストコントロール図説第Ⅲ集,15-5,1990.社団法人日本ペストコントロール協会.
2)林庄一.害虫スライド集,6,1999. 公益社団法人日本ペストコントロール協会.
3)渡辺護. 家屋侵入性カメムシ 4 種類の数種殺虫剤に対する感受性.衛生動物 45(3), 239-244, 1994.日本衛生動物学会

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