ペストコントロールの基礎知識と知って得する技術ノウハウ・情報 第18回

鵬図商事株式会社 企画部 芝生圭吾

出典元:月刊HACCP298号より

茶立虫=小豆洗い=チャタテムシ

6月の気温上昇と梅雨による湿度上昇は、チャタテムシやダニが急増する原因となります。チャタテムシという虫は体長2mm以下の微小な昆虫ですが、小さいがゆえに、いつの間にか侵入・発生・繁殖してしまう事が多く、医薬品製造工場など高度なペストコントロールを実施している工場でも防除に苦労する事が多い虫です。チャタテムシは漢字で「茶立虫」と書くのですが、その由来は江戸時代、チャタテムシが障子に留まり鳴いた時の音が、茶せんで抹茶をたてる音に似ている事からきています。※音を出すのはコチャタテなどチャタテムシ類の一部です。また、チャタテムシを小妖怪になぞらえ「小豆洗い」とも呼ばれていました。今号では江戸時代から馴染み深いチャタテムシ類の生態と防除方法をご説明させて頂きます。

チャタテムシ類の生態

チャタテムシ類は、噛虫目(旧チャタテムシ目)に属する昆虫で、日本では約150種類ほどが知られています。チャタテムシ類の多くは屋外で生活していますので、屋内で繁殖するのはごく一部の種になります。当社への相談が多く寄せられるのは、ヒラタチャタテ、カツオブシチャタテ、コチャタテの3種です。

  • ● ヒラタチャタテの生活史
    ヒラタチャタテをはじめとするチャタテムシ類は卵→幼虫→若虫→成虫の順に成長する不完全変態の昆虫です。幼虫から成虫まで外部形態は同じで、脱皮を繰り返し成長します。チャタテムシ類の中には有翅の種もいますが、ヒラタチャタテに翅はありません。
  • ● ヒラタチャタテの成育速度
    ヒラタチャタテの成育は室温と湿度が大きく影響する事が分かっており、高温多湿の環境が最も成育に適しています。
    異なる室温でのヒラタチャタテ成育速度 1)
    平均室温 成育速度
    28度 卵が孵化するのに約  7日間、成虫になるまで約14日間を要する
    18度 卵が孵化するのに約35日間、成虫になるまで約55日間を要する
    10度 卵は孵化しなかった
    湿度100%、75%、33%、0%、室温28度での発育影響 2)
    湿度 生息数
    100% 増加は認められなかったが、減少もしなかった
    75% 増加した
    33% 減少した
    0% 減少した
  • ● チャタテムシ類の餌
    有機物やカビを主な餌にしている他、ツメダニや同僚の死骸ならびに脱皮殻なども食べる事もあります。
    物品に発生したカビを食べる為、畳、ござ、ソバ殻枕、ドライフラワー、乾燥食品などから大量発生する事があります。

● チャタテムシ類の繁殖力 1)

チャタテムシは交尾・受精を必要としない、単為生殖によって増殖します。1日辺りの産卵数は室温によって変化し、右表のようになります。

平均室温 産卵数(1日あたり)
28度 約2個
18度 約0.5個
10度以下 産卵しない
種名 ヒラタチャタテ カツオブシチャタテ
写真 3) 3)
体長 1~1.3㎜ 1~1.5㎜
体色 淡褐色~褐色 淡褐色~褐色
腹節背面に濃褐色の横帯がある。
無し 無し

チャタテムシ類の調査方法

チャタテムシ類の調査には、主に徘徊昆虫調査用トラップを用います。チャタテムシ類は、暗い湿った場所、狭い隙間などを好みますので、調査トラップを設置する時は、部屋の真ん中に設置するのではなく、壁際や部屋の隅に設置しましょう。

● 調査を実施する場所
粉塵の貯まりやすい機械の周り、粉の貯まりやすい場所、原材料投入口の下、原材料保管場所、パレット置き場、資材置き場、天井裏、エアコンダクト内部などになります。また、ヒメチャタテは紫外線に誘引される習性(正の走行性)がある為、捕虫器によく捕獲されますので、捕虫器での捕獲も必ず確認するようにしましょう。
  • ● 徘徊昆虫用調査トラップとゴキブリ用調査トラップは何が違うの?
    徊昆虫用は徘徊昆虫が侵入しやすいよう、開口部を広くしてあります。
    ゴキブリ用は粉塵などが入るのを防ぐ為、開口部を狭くしてあります。(ゴキブリは這い上って侵入する)

    写真左:徘徊昆虫調査用トラップ       写真右:ゴキブリ調査用トラップ

チャタテムシ類はどんな搬入資材に生息しやすいのか

チャタテムシ類は搬入資材のパレットや段ボールなどに生息する事が多いのですが、どのような資材に生息する事が多いのでしょうか。武廣(2018)らの報告によると、下記の傾向がわかっています。4)
・段ボールにはチャタテムシが生息しやすい。
・資材を保管する環境に生息数は依存する傾向がある。
・カビがない資材にも生息が見られ、カビ対策だけでは不十分である。
・樹脂系材料(PP・PE・PS)より植物性繊維(段ボール、紙袋)への生息数が多い。

チャタテムシ類の予防方法

チャタテムシ類の予防方法を前述の生態から考えると以下の事が挙げられます。

  • ① 温度・湿度を低く抑える
    チャタテムシ類は高温多湿な環境を好みます。その為、室温を出来るだけ低く保つ事、通風を工夫し、換気をマメに行う事で少しでも湿度を下げる事が重要になります。また、湿度を下げる事によって餌となるカビの発生を抑制する事にも繋がります。
  • ② 清掃
    餌となる有機物、カビ、乾燥食品などを除去する為に、マメに清掃を行いましょう。
  • ③ 搬入資材は早期処分を心掛け、処分するまでの間は密封する
    搬入資材である段ボール、紙袋などはチャタテムシ類が好んで生息する資材です。
    搬入後放置してしまうと、侵入を許してしまう原因になりますので、出来るだけ早期処分を心掛け、処分するまでの間はビニール袋などに入れ、密封する事が望ましいです。
  • ④ 隙間の穴埋め
    チャタテムシは体長2mm以下の微小な虫なので、僅かな隙間であっても、潜伏場所になりますし、隙間を通じて壁内と室内を行き来する事もあります。僅かな隙間をシーリング剤などで充填穴埋めを行いましょう。

チャタテムシ類の物理的防除(熱駆除)

チャタテムシ類は畳にも発生する事が多いのですが、そういった時は天日干しする事で、高温による物理的な駆除と同時に、乾燥によって繁殖しにくい環境にする事が出来ます。ヒラタチャタテは50度30分、60度10分で死滅するという報告(5がありますので、布団乾燥車や大型ヒーターによる加熱駆除も可能です。

チャタテムシ類に対する化学的防除

チャタテムシ類の防除は、発生源対策など出来る限り予防に努める事が望ましいですが、既に大量発生してしまった場合は、殺虫剤など化学的防除方法に頼らざるを得ません。ヒラタチャタテに対する殺虫剤の効力は有機リン系殺虫剤またはカーバメイト系殺虫剤がピレスロイド系殺虫剤と比較して高い効力を示す事が報告されています。6)
しかし、ピレスロイド系殺虫剤の中では、シフェノトリン、d-T80-プラレトリン、d-T80-レスメトリン、エンペントリンが特に殺虫効力が高く、ペルメトリン、エトフェンプロックスなどチャバネゴキブリに比較的効果の高い有効成分は殺虫効力があまり高くないという報告7)がありますので、殺虫剤を選ぶ時の参考にして下さい。

チャタテムシ類の薬剤防除事例紹介8)

チャタテムシ類の薬剤防除は事例発表が論文などで殆ど無く、具体的事例をお伝えし辛いのですが、今回殺虫剤メーカーである「日本液炭株式会社」に資料を提供頂きましたので、ご紹介させて頂きます。

ミラクンPYを用いたヒラタチャタテムシ防除事例

  • ① 施工場所、時期
    医薬品工場 3Fフロアの天井裏(約2,000㎡)
    施工時期  5月(2011年)
  • ② 施工内容
    準備 天井面が接する製造エリアの機械等を養生
    散布 点検口9カ所からミラクンPY噴霧
    投薬量 5g/㎥ (7kg 容器×2本使用)
    供試虫 ヒラタチャタテムシ(5カ所に設置)
  • ③ 現場図面と施工の様子
  • ④ 供試虫の殺虫効果
    試験結果は下記表の通り、全ての場所において十分な殺虫効果が示されました。
    設置場所 頭数 1日後 2日後
    生存数 致死率(%) 生存数 致死率(%)
    10 0 100 0 100
    12 0 100 0 100
    21 0 100 0 100
    12 0 100 0 100
    14 0 100 0 100
  • ⑤ 薬剤の移行(養生効果の確認)
    試験に用いたミラクンPYの有効成分「ジョチュウギクエキス1.0%」は、天然物を使用した成分であり、残留規制の基準値が高い殺虫剤です。ろ紙をA~H8箇所に設置し、薬剤の残留性を検証した結果、全ての場所から薬剤は検出されませんでしたので、薬剤の残留を心配せずに使用する事が出来ます。
    ろ紙設置場所 付着量(μg/平米)
    1日後 2日後 3日後
    A製造場 検出せず 検出せず 検出せず
    B包装場 検出せず 検出せず 検出せず
    C製造場 検出せず 検出せず 検出せず
    D包装場 検出せず 検出せず 検出せず
    E保管室 検出せず 検出せず 検出せず
    Fサンプリング室 検出せず 検出せず 検出せず
    G廊下 検出せず 検出せず 検出せず
    H廊下 検出せず 検出せず 検出せず

ミラクンS・PYのヒラタチャタテムシ成・幼虫に対する殺虫効力試験

上記実地試験以外に研究室でミラクンS・PYを用いてヒラタチャタテムシ成・幼虫に対する効力試験を実施した結果、両薬剤共に致死率が100%に達した為、ヒラタチャタテムシに高い致死効果が期待できると言えます。(試験結果は下記表参照)

条件 薬剤名 投薬量
(g/㎥)
暴露時間
(時間)
調査数
(3反復)
苦死虫率(%)
2日後
少量の粉餌
(0.1g/カップ)添加
ミラクンS 5 4 428 100
10 2 459 100
ミラクンPY 5 4 303 100
10 2 290 100
多量の粉餌
(3.0g/カップ)添加
ミラクンS 5 18 495 100
ミラクンPY 5 18 216 100

ミラクンS・PYとはどのような殺虫剤なのか

ミラクンは、空間内に噴霧・充満させる事で害虫を駆除する事が出来る炭酸ガス製剤で、第2類医薬品の承認を得ている殺虫剤です。

  • ● 炭酸ガス製剤とは
    有効成分と液化炭酸ガスのみで構成された薬剤です。有機溶剤や界面活性剤、水等の補助溶剤を含みません。噴射剤として液化炭酸ガスを使用している為、動力が不要です。また、水など希釈剤等を一切使用していない為、対象施設の汚れが少なく、清潔空間を維持したまま衛生管理を行うことが可能です。
  • ● ミラクンSの特長
    人体に対して安全性が高いピレスロイド系の有効成分「フェノトリン」を使用しています。
    様々な現場で使いやすくコストパフォーマンスが高い殺虫剤です。
  • ● ミラクンPYの特長
    人体に対して安全性が高いピレスロイド系の有効成分「ジョチュウギクエキス」を使用しています。
    ジョチュウギクエキスは天然物であり、有機加工食品の有機JAS規格で使用が認められています
    その為、有機JAS資材認定を取得しており、有機JAS工場で薬剤を使用する際の事前申請が不要になります。
    商品名 ミラクンS ミラクンPY
    医薬品分類 第2類医薬品 第2類医薬品
    有効成分 フェノトリン1.0% 天然ピレトリン1.0%
    用法

    用量

    ハエ・カ 1g/㎥ 30分 1g/㎥ 30分
    ゴキブリ 10g/㎥ 4時間 5g/㎥ 4時間
    塵性ダニ 5g/㎥ 4時間
  • ※投薬量の目安:標準ノズルでの薬剤噴霧量は毎秒約7g(毎分410g)
  • ※用法用量の時間表示は処理時間を示します。

引用・参考文献

1)野田 和之.日本建築学会研究報告. 九州支部. 1, 構造系 (27), 61-64, 1983.日本建築学会.
2)武廣絵里子. 環境工学II , 609-610, 2017.日本建築学会.
3)林庄一.害虫スライド集,10,1999. 公益社団法人日本ペストコントロール協会.
4)武廣絵里子. 環境工学II , 903-904, 2018.日本建築学会
5)野田和之.衛生動物35,185,1984.衛生動物学会
6)哘 恵子.日本環境衛生センター所報17,67-69,1990.(一財)日本環境衛生センター
7)柴田光信. ペストロジー学会誌 13(1), 38-39, 1998.日本ペストロジー学会
8)日本液炭株式会社.チャタテムシへの活用,61-68,2017. 日本液炭株式会社

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