ULV処理という防除技術 その2

鵬図商事株式会社 足立雅也

ULV処理の技術開発は、農業の発達、農場の大規模化によります。農場が大規模になると農薬を散布するのに飛行機が使われました。しかし、飛行機に載せられる殺虫剤の重量や体積に限りがあります。以前は水で希釈した薬液を大量に載せて飛行し、大量に散布していました。ところが、ULV処理として、有効成分が高濃度の殺虫剤を細かい粒子にして散布することにより、一度の飛行でより広範囲に効率的に散布することができるようになりました。

ULV処理が最初に実施されたのは、東アフリカの畑作地帯におけるバッタの駆除だったといわれています。バッタの移動速度は早く、また、食害地域も広いため、従来の散布方法では対応が困難で非能率的でした。ULV処理はこれに比較して効果的でした。
当時は有効成分としてDDTを用い、溶媒はケロシンや燃料油でした。粒子径は100~140ミクロンで、バッタへの直撃効果に植物への高付着率で成果があがりました。また、防疫の場面では1950年代にツェツェバエ(吸血して感染症を媒介する海外のハエ)の駆除が実施され、散布技術に関する研究が行われました。その後、海外のメーカーが農業害虫の駆除で施工技術や機材の研究を重ねて今日に至ります。

ULV処理という技術は最適粒子径論に基づいています。Himel(1969)は最適粒子径を、最少量の殺虫剤と最少の環境負荷で最大の有害昆虫防除効果をあげる大きさと要約しています。最終的に必要なのは、昆虫の体に薬剤の粒子を付着させることです。それには空中に浮遊し、気流で昆虫まで運ばれることが可能な粒子径範囲内の粒子が最も効果的といえます。

研究データによれば、最適粒子径論で述べられている基準に合致し、ゴキブリその他の建造物害虫を防除できるという点で、直径5-20ミクロンの粒子が他のサイズのものより良いといわれています。これより大きな粒子は落下が早すぎて表面を無用に濡らし、割れ目、裂け目への侵入はわずかになります。また、これより小さい粒子は対象とする昆虫の体表に付着せず、それてしまう傾向にあります。

粒子の害虫の潜伏場所への侵入は、粒子のサイズ、噴霧される際の噴霧機からの空気速度、施工場所内の空気の流れ、重力、気圧などに影響されます。ですから、十分な効果を得るためには、ULV処理はすべての昆虫の防除のための万能方法というよりも、ひとつの手段としてとらえて他の防除方法と組合わせることも考えましょう。

例えばチャバネゴキブリの防除です。最近ではチャバネゴキブリの防除にベイト剤(食毒剤)を用いることが多くなりました。ベイト剤だけを使用した防除では、効果が実感できるのに2週間以上を要します。一方、ULV処理だけでは、ベイト剤ほどの長期間の持続効果が期待できません。しかし、ULV処理と共にベイト剤を併用することで、速効性に加えて長期にわたる残効性が試験の結果確認されました。あるいは、残効性に優れた有機リン系の薬剤やマイクロカプセル剤(MC)をあらかじめ残留処理の目的で散布しておきます。それからULV処理をすると、フラッシング効果(追い出し効果)でチャバネゴキブリが表に飛び出したところで、強制的に残留処理面に接触させることができるのでより効果的です。

最後によくある問い合わせを記載します。

Q.ULV噴霧には、なぜULV乳剤E、ULV乳剤Sを使う必要があるのですか?
A.専用の装置を用いてULV噴霧できる薬剤は、厚生労働省によって承認されたULV乳剤EとULV乳剤Sだけです。ULV乳剤E、ULV乳剤Sは、一般用医薬品の中の第2類医薬品としてリスク区分されます。エクスミン乳剤、スミスリン乳剤は防除用医薬部外品で、ULV噴霧には使用できません。ULV噴霧には、ULV乳剤E、ULV乳剤Sをご使用ください。

Q.ULV乳剤E、ULV乳剤S(ピレスロイド)とは何ですか?
A.除虫菊(シロバナムシヨケギク)に含まれる天然殺虫成分をピレトリンと呼びます。ピレスロイドはピレトリンの化学構造式に似た化合物のグループの総称です。ピレスロイドの優れた特長として、速効性であること、致死効力が高いこと、忌避効果があること、追い出し効果があること、安全性が高いことなどが挙げられます。ULV乳剤Eはペルメトリン、ULV乳剤Sはフェノトリンを有効成分とした濃厚少量噴霧用殺虫剤です。

Q.ULV乳剤E、ULV乳剤S(ピレスロイド)の安全性について
A.有効成分のピレスロイドは害虫の表皮や口などから体内に入り、神経に作用しマヒさせて虫を退治します。哺乳類の体内では分解酵素の働きで、ピレスロイドは速やかに分解され、短時間で体外へ排出されます。動物の体内だけでなく自然界においても、光、空気、熱に触れると他の殺虫剤よりも分解しやすい性質があります。つまり、必要な時に必要な場所で効力を発揮して、その役目が終われば、すぐに分解されて消えていくという環境にも優しい殺虫剤です。
(おわり)

参考文献
林 晃史:ULV研究 第1号、日本ULV研究会発行 1982年
林 晃史:ULV研究 第2号、日本ULV研究会発行 1984年
林 晃史:ULV研究 第3号、日本ULV研究会発行 1985年
林 晃史:ULV研究 第4号、日本ULV研究会発行 1986年
林 晃史:ULV研究 第5号、日本ULV研究会発行 1988年
林 晃史:ULV研究 第6号、日本ULV研究会発行 1989年
林 晃史:ULV研究 第7号、日本ULV研究会発行 1991年
林 晃史:ULV研究 第8号、日本ULV研究会発行 1992年
林 晃史:ULV研究 第9号、日本ULV研究会発行 1992年
林 晃史:ULV研究 第10号、日本ULV研究会発行 1993年

引用資料
大日本除虫菊株式会社:ULV噴霧専用薬剤Q&A

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