建設業者の防虫対策

外部から侵入する害虫対策(建物の遮蔽性の向上)

稲岡 徹 元㈱竹中工務店 エンジニアリング本部

1.はじめに

 前回まで建物内部で発生する害虫の繁殖防止対策について述べてきましたが、今回からは、建物の外部で発生し、内部に侵入して来る害虫の防止対策を解説します。建築的防虫技術としての害虫侵入防止対策は、次の3つのポイントに分けて考えると、解りやすいでしょう。その3つとは、①建物の遮蔽性(≒気密性)の向上、②空気圧の調節、③照明器具の選択と利用です。まず遮蔽性の向上について説明しましょう。

2.バリアの多重化による遮蔽性の向上

 建物の遮蔽性を高めるには、二つの方法があります。一つはバリアを多重化すること、もう一つはバリア自体を高気密化することです。ここで言うバリアとは具体的には、ドアやシャッターなどの遮蔽装置のことです。まず多重化について考えてみましょう。誰が言い出したか知りませんが、虫の建物への侵入に関して次のような俗説があります。それはバリアが1枚増えると虫の侵入数は一桁下がる、即ち1/10に低下するというものです。この俗説を検証してみましょう。
 図1は工場の搬出・搬入口を模した開口部で、バリアとなるシートシャッターが1枚と2枚で害虫の侵入数にどのくらい差が出るか、実験で確かめた結果を示しています。シャッターは15分毎に15秒間開けて閉めるという動作を50回繰り返しました。シャッター2枚の方は、外側を閉めて3秒後に内側を開ける時差式を採用しました。この実験条件では、バリアが2枚の方が1枚に比べて侵入虫数が78%少なくなるという結果でした。一桁下がるというほどの効果はありませんでしたが、バリアが1枚増加することによって虫の侵入は1/4~1/5に低下しました。もし内側のシャッターを外側より小さくするとか、開閉操作の時差を3秒より大きくすれば、この効果はさらに大きくなり、逆に内・外のシャッターを同時に開けるような操作をすれば効果は小さくなるでしょう。

3.シャッターの問題点

 工場の搬出・入口で最も多用される遮蔽装置はシャッターです。金属シャッターとシートシャッターがありますが、前者は堅牢性に、後者は開閉動作の高速性に特徴があります。それぞれの長所を生かして、強風対策やセキュリティ確保が必要な外部に面した箇所には金属シャッター、軽快な開閉動作が望まれる所ではシートシャッター、というように使い分けますが、搬出・入口には、最外部に金属シャッター、その内側にシートシャッターの二重構造にするのが理想的です。閉めてしまうと、盤石のように見えるシャッターですが、防虫の観点からは金属・シート両タイプに共通する欠点があります。シャッターの開閉はほとんどが水平巻き上げ方式ですが、その構造から虫が通過し得る4つの経路が出来やすく、防虫上注意が必要です。それは、① シャッターケース内を貫通する経路、②ガイドレールの隙間を通過する経路、③シャッターの底面と床の隙間を潜り抜ける経路、④シャッター下端の角を通り抜ける経路です。

 ①に関して言うと、金属・シートを問わず、ごく一部の製品を除いて防虫対策はなされていません。金属シャッターなら部材の上部に防虫用のブラシを取り付けることで対策できます。シートシャッターでは開閉速度が速いためブラシがすぐに消耗するので、施工は容易ではありません。
 ②は、製品による差が大きい部分です。手を加えなくても隙間が小さく防虫性能の高いものと、隙間が大きく虫の侵入に無防備なものがあります。これは見れば分かりますので、よく注意して製品を選択しましょう。良くない製品を選んでしまった時には、ブラシをサイド部分に張り付ける防虫性能の強化が不可欠となります。ただし上と同じ理由で、シートシャッターの対策としてはお勧めできません。
 ③と④は、製品の差より、施工の問題です。防虫を意識して正確に施工すれば、このような箇所の隙間はほぼ完全に塞ぐことができます。底面に関しては、床コンクリートを平らに打設することが基本です。ここが斜めになっていたり凹凸があると、シャッターの底面との間に隙間が出来てしまいます。この部分の隙間を封鎖するためにシャッターの底面に、ゴム、ウレタン等の緩衝材を付けることはたいへん有効です。下端の角はブラシや硬質ゴム等の材料でしっかりと隙間塞ぎをしておかなければなりません。底面や下端角の隙間を放置すると、特に歩行性害虫の大量侵入を招く可能性があります。

4.終わりに

 外部からの害虫の侵入防止の観点から言えば、シャッターやドアなど可動の遮蔽装置が最大の弱点となります。言うまでもなく、虫の侵入が最も甚だしいのはそれらが開放されている時で、この場合にはいかなる装置も無力です。したがって、開放時間を最短にすることや、2枚のシャッターを同時に開けないといった開閉管理は、防虫対策の基本中の基本です。しかし同時に、閉じた時の防虫性能も疎かにはできません。シャッターにせよ、ドアにせよ1日の大半は閉じているからです。底面と床との間に数ミリもの隙間があるシャッターは、たとえ閉鎖されていても、歩行侵入害虫にとっては、遮蔽物は無いも同然と言えるでしょう。

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