北海道はトコジラミ対策が熱心です

鵬図商事株式会社 足立 雅也(Contributor)

 トコジラミの生態や対策についての講習会が、全国各地で開催されています。北海道では特にペストコントロール協会と札幌市保健所が、トコジラミ対策に力を入れています。そこで今回は、北海道で行われたトコジラミ対策の講習会をレポートします。

 北海道ペストコントロール協会では、増加するトコジラミ防除依頼に備えて、昨年12月9日に勉強会を開催しました。協会会員約60名と、札幌市保健所等の行政から8人の参加があり、関心の高さが伺えます。トコジラミ防除の情報が少ない中で、生態、被害事例、施工事例、今後の課題などの内容でしたので、参考になると大変盛り上がりました。特に、トコジラミを初めて見る方も多く、宿泊者目線で撮った動画では、ベッドの上を走り回るトコジラミのシーンで会場がざわめきました。

 北海道ペストコントロール協会の藤村協会長からの紹介で、7月14日の札幌市保健所環境衛生課が主催するトコジラミの講習会では、講師を務めさせていただくことになりました。旅館・ホテルの関係者と駆除業者を合わせて、約100名の参加がありました。
 事前に、札幌市内におけるトコジラミの発生状況の実態の把握のために、アンケート調査が行われました。対象は、建築物衛生法上の登録業者(以下登録業者と称す)と旅館業法上の許可施設(以下宿泊施設と称す)でした。回答数は登録業者では178社中93社(回答率52%)、宿泊施設では291施設中124施設(回答率43%)でした。
 アンケートの内容と集計結果は次の通りです。

■登録業者へのアンケート集計結果

Q1.トコジラミを知っているか?
はい、68件(73%)・いいえ、25件(27%)
Q2.相談を受けたことがあるか?
ある、18件(19%)・ない、75件(81%)
Q3.駆除を実施したことがあるか?
ある、計16件(17%)
(1回だけ)5件(5%)
(複数回) 7件(8%)
(回数不明)4件(4%)
ない、77件(83%)
 駆除したことがあると回答した場合(全
て複数回答可)
Q4.時期はいつか?
平成23年、4件(20%)
平成22年、5件(25%)
平成21年以前、8件(40%)
覚えていない、3件(15%)
Q5.どのような施設か?
ホテル・旅館、12件(57%)
その他、9件(43%)
 官舎、集合住宅、障害者施設、
 一般住宅、保育園 など
Q6.場所はどこか?
札幌市内、13件(68%)
道内、6件(32%)
Q7.発生は増えてきているか?
はい、10件(11%)・いいえ、2件(2%)
わからない、51件(55%)
無回答、30件(32%)

■宿泊施設へのアンケート集計結果

Q1.トコジラミを知っているか?
はい、90件(73%)・いいえ、34件(27%)
Q2.発生したことがあるか?
ある、12件(10%)
(1回だけ)7件(6%)
(複数回)5件(4%)
ない、101件(81%)
わからない、11件(9%)
 発生したことがあると回答した場合(全
て複数回答可)
Q3.時期はいつか?
平成23年、3件(20%)
平成22年、7件(47%)
平成21年以前、5件(33%)
Q4.駆除の方法は?
自分で駆除、2件(17%)
専門業者に依頼、10件(83%)
Q5.駆除できたか?
はい、11件(92%)・継続中、1件(8%)
 アンケートの結果、トコジラミの発生はまだまだ少ないように見えますが、アンケートに答えていない方も半数いらっしゃるし、発生に気づいていないこともあるので、現実にはもっと多いことでしょう。ぜひ、アンケートは毎年続けていただきたいと思います。
 札幌市内にある酪農学園大学でも7月28日に「トコジラミ蔓延の現状と対策」が開催されました。これも藤村協会長からのご紹介です。
 1 題目はタイ国立衛生研究所のDr.Apiwat Tawatsinさんによる「タイにおけるトコジラミ再興とそれらの殺虫剤抵抗性-駆除の試み-」の講義を受けました。
 タイでも海外から観光客が多数訪れ、旅行客によるトコジラミの持込が、蔓延の原因のひとつとして考えられているようです。また、日本や諸外国と同様に薬剤抵抗性による難防除に悩まされています。
 バンコク、チョンブリ、チェンマイ、プーケットそしてラビで捕獲したネッタイトコジラミを研究所で累代飼育した後、抵抗性の試験をしました。WHOの殺虫剤抵抗性検査キットを用いては、DDT、ディルドリン、マラチオン、フェニトロチオンに抵抗性が確認されました。市販殺虫剤を用いての抵抗性試験では、
Imidacloprid20%(ネオニコチノイド)
Fipronil2.5%(フェニルピラゾール)
Clorfenapyr24%(ピロール基)で効果が認められたのに対し、
Diazinon23%(有機リン)
Fenobucarb20%(カーバメート)
Propoxur20%(カーバメート)
Esfenvalerate5%(ピレスロイド)
Cypermethrin10%(ピレスロイド)
Bifenthrin10%(ピレスロイド)
Etofenprox10%(ピレスロイド様)では効果が認められませんでした。
ここで注目すべきは、有機リン系とカーバメート系でも抵抗性が確認されたということです。薬剤抵抗性防止のためには、薬剤ローテーションや物理的防除が必要ではないでしょうか。補足ですが、日本ではI m i d a c l o p r i d、F i p r o n i l、Clorfenapyrの含まれているトコジラミ防除用殺虫剤は、現在のところありません。
 2題目は酪農学園大学特任教授であり国立感染症研究所客員研究員の渡辺護さんによる「トコジラミの確実な駆除を目指して」の講義を受けました。
 殺虫剤に対する感受性試験では、ろ紙継続接触試験と腹面微量滴下試験をフェノトリン、ペルメトリン、ジクロルボス、フェニトロチオン、プロポクスルを使用しました。これらの薬剤の中で効果が高かったのは、プロポクスル、ジクロルボス、フェニトロチオンでした。
 ドライヤーやスチーマーを用いた駆除法の試験では、隙間の奥に熱風もしくは蒸気を吹き込んだ場合など、現場に近い条件で行っています。その結果から見て、熱風よりも蒸気の方が効果が得られることが分かりました。

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