千葉県で発生した高病原性鳥インフルエ ンザの対応 その1 インタビュー

鵬図商事株式会社 足立 雅也

 
 2011年3月13日に、千葉市若葉区の鶏農場で、高病原性鳥インフルエンザが確認された。さらに16日に同じく若葉区で2例目が確認された。11日に東日本大震災の被害を受けたばかりの千葉県にとっては、痛恨の出来事であったであろう。そんな状況の中、千葉県ペストコントロール協会が、行政と協力して終息に向けて活動を始めた。震災の影響もありながら、約1カ月というスピードで終息させることができた。その裏では様々な困難があった。今回、千葉県ペストコントロール協会(以下千葉PCO協会と称す)の松尾博之協会会長に、貴重な話を伺う機会を得た。
 足立 「このたびは東日本大震災に加え高病原性鳥インフルエンザの発生という大きな出来事があり、御見舞い申し上げます。さて、今回の高病原性鳥インフルエンザでは、千葉PCO協会が2カ所の消毒ポイントで車両消毒を行ったと聞きました。これは日常から行政とのよいお付き合いがあったからこそ、要請があったのだと察しますが、どのような取り組みをされていたのでしょうか。」
 松尾 「日常では行政の行う研修の、講師依頼を受けておりました。感染症に関しては衛生隊を設立して、あらかじめ組織図を提出していました。昨年は宮崎県で口蹄疫が発生し、県庁畜産課の衛生環境推進室から見積依頼を受けたことがあります。もしも千葉県内で高病原性鳥インフルエンザが発生しても、直ちに出動できるように準備もしていることも伝えていました。」
 足立 「事が起こる前から協力の姿勢を示しておられたのですね。では今回、出動に至るまでに色々と打ち合わせをされたと思いますが、差し支えない程度に教えてもらうことはできますか。」
 松尾 「高病原性鳥インフルエンザの発生は、13日にテレビのニュースで知りました。当社も震災の被害に遭い、状況確認のために慌しくしていました。それでも気になって3月14日に県庁の畜産課の様子を伺ったところ、行政の方々が車両消毒を行い始めていました。しかし、津波の対応や液状化現象の対応で、行政だけでは手が足りない様子でしたので、千葉PCO協会も協力することをお伝えしました。16日に畜産課に車両消毒の見積書を提出し、17日の午前には正式に車両消毒の依頼を受けました。」
 足立 「行政との打ち合わせは松尾会長がされたのでしょうか。」
 松尾 「はい、私が17日の朝から、畜産課の衛生環境推進室の方と、人数や消毒ポイントについて電話で打ち合わせを始めました。協会員に対しては、各社から何名出せるのか。動力噴霧器を何台出せるのか問合せました。」
 足立 「打ち合わせを行うものの、震災の影響もあって、簡単にはいかなかったと察します。人数を集めるのも苦労があったと思いますが、いかがだったのでしょうか。」
 松尾 「19日の朝6時から、4ポイントある消毒ポイントのうち、国道51号線のポイントを、21日からは東金のポイントの、計2カ所で車両消毒を始めました。朝から夜まで通しで作業をされていた行政の方もいらしたようで、千葉PCO協会が2カ所を受け持つことで、大変喜ばれました。協会員6社から総勢22名集まり、午前と午後の二交代制でした。消毒ポイントでの役割分担は、千葉PCO協会から車両消毒に3名、警察官から誘導に2名、行政から記録や防護服の手配などに3名程の構成でした。また、動力噴霧器と燃料は千葉PCO協会員の持参です。」
 足立 「燃料はガソリンを使いますよね。そのころ東京でも長時間並んで、やっと手に入る状況でしたが、やはりこういう事態だと優先的に入手できたのでしょうか。」
 松尾 「いえいえ。午前の消毒班は、作業が終わってからガソリンスタンドに並び、午後の消毒班は午前中に並んで、消毒ポイントまでの車のガソリンと、消毒に使う動力噴霧器の燃料をこまめに調達しました。心身ともに疲れていましたので、本当に大変でしたよ。」

 足立 「6社からしか人が集まらなかったのは、震災の影響で参加できない会社が多かったのでしょうか。」
 松尾 「いいえ、そうではないのです。多数の会社から協力の返事をいただきました。しかし、交代制ということになると、初めて作業する者同士、行政側も初めての方という場合、勝手が分からないので混乱や間違いが生じるかもしれません。ですから、できるだけ作業者を固定させ、もしも人数の都合がつかないときには控えの方々に出動していただく方法をとりました。」
 足立 「なるほど。確かにそうです。奥深く考えられていますね。ところで、二交代ということですが、深夜の消毒作業はしなくても大丈夫だったのでしょうか。」
 松尾 「対象となる車両は養鶏場に出入りする車両に限定されています。行政から出入り業者に対して、前もって消毒の協力と消毒ポイントの場所を通知しています。夜中に搬入搬出はないので、出入りする車両はありません。また、鳥の殺処分は業界に大打撃を与えるので、被害を拡大させないように、積極的に消毒ポイントにきてくれました。」
 足立 「出入り業者が積極的だと、消毒ポイントでの作業はスムーズにいきそうですね。」
 松尾 「ええ、そうなんですが、それだけではうまくいかず、色々調整もしたのですよ。例えば、国道51号線のポイントでは、動力噴霧器2台を使って車両消毒をしていました。ところが、1台でできるってことになったのです。しかし、国道51号線は、自然渋滞が起きることもあるほど昼間の通行量は多いので、8トン車や10トン車のトラックが来ると、時間がかかって迷惑になる。また、予備の水タンクもなかったので、薬液がなくなると片道10分かけて水を入れにいかなくてはなりません。そんなことから2台に戻して欲しいと希望しました。その結果、動力噴霧器が2台に戻りましたので、スムーズに消毒作業ができました。他にも、消毒ポイントのテント、机、椅子、投光器、発電機は震災の影響でレンタルでも入手困難でしたので、行政に借してもらえるようにお願いもしました。」
 足立 「震災と重なったことで、よけいに苦労をしなければならなかったのですね。それにしても長引くことなく、早く終息してよかったですね」
 松尾 「はい、ホッとします。今回が千葉PCO協会として初めての仕事でした。皆、社会貢献という意識や責任感とか使命感を感じながら任務に就いていました。いい仕事ができたと思います。今後も何かあれば、ぜひ千葉PCO協会を頼っていただけたら嬉しいです。そして、協力してくれたPCOの皆さんにも感謝しています。ありがとうございました。」

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