はじめに

 都心に本社のあるPCO大手、S消毒の一般住宅施工で最も大事なのがトコジラミだ。と言っても、いまから40数年前の昭和41年当時のこと。その施工額は総売り上げの52.4%を占めるほど大きかった。(C製薬内部資料、1965)
 アメリカのPCO業界も同様だった。有機塩素系殺虫剤の全盛時代である。「DDT粉剤をほんの一つまみ、ベッドの縫い目に擦りこむだけでOKだったのさ。こんなに儲かる仕事はほかになかったね」。NPMA(全米ペストマネジメント協会)の長老、クーパーさんに聞いた話だ。その後彼らの儲け口はゴキブリに向かい、いまはアリ類が1位を占める。で、ここ40年ほどはトコジラミ防除など口の端に上ることすらなかった。
 ところが、05年頃からトコジラミの再発がアメリカの防除業界を悩ませ始める。それどころか、日本をはじめ世界中の都市部で被害が出ている。なぜいまトコジラミなのか。様々な要因が挙げられるが、ゴキブリやアリ防除をベイト剤専一にしたことが引き金らしい。それ以前は、屋内での油・乳剤処理が、意図せずにトコジラミも抑えていたのだという。
 問題なのはDDT抵抗性系統のトコジラミで、新開発のピレスロイドでも防除が難しい。それでKdr因子の関与なども疑われている。米国EPAは緊急免除条項を適用して、有機リン剤やカーバメート剤の屋内使用許可を検討中だ。オハイオ州はプロポクスル3製剤の使用を、期間限定で認めるようEPAに求めた。幸か不幸か、我が国には他国で使用禁止のリン剤やカーバメート剤に縛りがない。だからと言ってこのままでよいだろうか。そろそろ、殺虫剤等の国際間ハーモナイズに、真剣に取り組むべき時期にあることを自覚したい。(龍)

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