Hohtoトラストを使用した生活害虫の防除方法

ケミプロ化成株式会社 村田 二郎

Ⅰ ムカデの防除
ムカデ類の生態と特徴
 一般的にムカデと呼ばれるものは、脚の数により3つのグループ(目)に分けられます。よく混同されるヤスデ類とは、形態的にも生態的にも大きく異なります。
 イシムカデ目:脚が15対
 オオムカデ目:脚が21対、または23対
 ジムカデ目:30対から多いものでは170対

ムカデに咬まれたときの対処法
 ムカデに咬まれたら直ちにアゴを引き離し、ムカデの頭を叩きつぶして確実に殺してください。確実に殺しておかないと再度咬まれることもあります。その後、かみ跡から毒をできるだけねばり強く時間をかけて絞り出してください。体内に入る毒を少しでも減らすことが重要です。これをやるとやらないでは、そのあとの痛みに大きく影響します。水道の流水などに患部を浸しながら行えばさらに有効です。
 ムカデの毒は神経毒なので薬を塗っても、すぐに痛みが引くわけではありません。毒の成分は種類によって多少異なりますが、溶血性毒で、ヒスタミン、セロトニン、蛋白分解酵素などが検出されています。繰り返し咬まれた場合、アレルギー症状(アナフィラキシーショック)が報告された例もあります。死亡例はほとんどありませんが、必要に応じて医者の診断を受けるようにしてください。
 小さい子供が咬まれた場合は、痛がって毒を絞り出すこともままならないので、すぐに病院に連れて行った方が無難です。

ムカデ類の防除方法
 ムカデは、薬剤の効きにくい(効果の発現が遅い)虫です。ゴキブリ用などの速効性のある殺虫スプレーを噴きかけてもなかなか死にません。死んだと思ってつまみ上げたら、実は生きていて咬まれたということもしばしばあります。そのため、室内に侵入してきたものに対しては、丸めた新聞紙等のある程度固いもので一気に(頭を)叩き潰した方が、安全かつ確実だったりします。しかし、ちょっと叩いたくらいではびくともしませんので、殺るときは躊躇せずにおもいっきり叩く方がいいです。
 ムカデの防除は、生息場所である草むらや林、竹やぶ等を全面薬剤処理することは、まず不可能なので、ムカデを家の中に入れないように処置することが重要です。

Hohtoトラストによるムカデの防除方法
 Hohtoトラストを用いてムカデを防除する場合は、以下の手順で処理してください。 ※散布液の希釈倍率:200倍
①約20cm程度の幅で家を取り囲むように基礎部分や地面に散布してください。家の侵入が多い初夏から秋にかけては特に念入りに散布してください。
②さらに侵入してきそうな場所(基礎の換気口や壁の隙間など)や、一時的な潜み場所(雨戸や戸のレール部分など)を重点的に処理してください。
③家の周りのムカデが潜んでいそうな場所(石垣、木材や植木鉢など下、落ち葉などの下)にも処理してください。その際には、フラッシングアウト(薬剤に反応してとび出してくる現象)に注意してください。
④それでも発生量(被害)が減らない場合は、床下や天井裏が潜み場所になっていることもあるので、これらの場所へも散布してください。
⑤屋根瓦などを庭に置いて、わざとムカデが好む隙間を作っておいて、その下に薬剤を撒いておくトラップなども有効です。

 なお、これらの処理を行っても、ムカデは薬剤の効果の発現が遅いので、屋内に侵入してきてから死ぬこともあります。あらかじめこの旨をお施主様に説明しておいた方がよいと思います。

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Ⅱ ダンゴムシの防除
ダンゴムシ類の生態と特徴
 一般にダンゴムシとよばれているものは、オカダンゴムシのことです。北海道や東北地方にはほとんどいませんが、関東以南の日本各地にごく普通に生息しています。明治以前には、オカダンゴムシについての記述や資料が全くないことから、明治ごろに欧米から渡来し、定着した帰化動物であると考えられています。このオカダンゴムシに近い形態と生態をもつ日本の在来種は、ワラジムシです。ワラジムシは日本全土に普通に生息しています。オカダンゴムシとワラジムシの決定的な違いは、オカダンゴムシは刺激を受けると体を折り曲げて球状になるという性質をもっています。そのため、オカダンゴムシは、地方によっては、“丸虫”と呼ばれることもあります。
 オカダンゴムシ、ワラジムシともに人を刺すことも咬むこともなく、病気の媒介も知られていません。主に腐った植物質のものを食べますが、植物の新芽などもかじるので農作物の害虫なることもあります。

ダンゴムシ類の防除方法
 人に直接的な被害を与えるわけではないので、積極的に駆除する必要はありませんが、一般家庭においてはその形態の気持ち悪さからきらわれることが多いようです。
 ダンゴムシの防除において、高い効果が得られるのは、活動期の春~夏の薬剤処理よりも秋や冬での薬剤処理です。秋冬に薬剤処理しておくと、次の年の発生量を減らすことができます。

Hohtoトラストによるダンゴムシの防除方法
 Hohtoトラストを用いてダンゴムシを防除する場合は、以下の手順で処理してください。
 ※散布液の希釈倍率:800倍
①建物周りの生息箇所(落ち葉や朽木など)を重点的に散布処理してください。
②冬場であれば、床下などの越冬場所を処理すると簡単に大量のダンゴムシを駆除することが可能です。
③薬剤処理以外に、落ち葉や枯れ草の除去など環境の整備も重要で、高い効果が得られます。

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Ⅲ アルゼンチンアリの防除
アルゼンチンアリの生態と特徴

 アルゼンチンアリは、働きアリの体長が、約2.5ミリメートルの比較的小さなアリです。体形は、在来のアリに比べるとスマートで細長く、長い触角を持っています。
 女王アリの体長は、働きアリの2~4倍程度の大きさです。ただし、働きアリと比較して長い触角と脚の影響で実際はより大きく見えます。そのため、女王アリがいればすぐに判別できます。
 アルゼンチンアリの体色は茶褐色です。アルゼンチンアリの行列を遠目に見ると黒色に見えますが、近づいて良く見ると、実際の体色は茶褐色です。
 アルゼンチンアリは、動きが大変すばやく、ちょこまかと動き回るのが特徴的です。アルゼンチンアリは、在来のアリの2~4倍の速さで歩きます。
 アルゼンチンアリは、大変食欲の旺盛な雑食性で、何でも食べます。中でも、砂糖や花の蜜などの甘味を好んで食べます。
 アルゼンチンアリは、地中にも巣を作りますが、非常に営巣性(巣を作る性質)が高いため、いろいろな場所で巣を作ります。特に、物の隙間や人手が加わった場所を好み、石や木・枯葉の下、コンクリート構造物のひび割れの中、家壁の隙間、カーペットの下、車のトランクの中など、どんな場所へでも巣を作ります。アルゼンチンアリは、地中深くに巣穴を掘るということはありません。
 アルゼンチンアリは、大多数の働きアリと複数の女王アリからなる大規模な巣を形成します。一つの巣の中には、複数の女王アリが存在し、多いときには数百匹の女王アリが存在することもあります。

アルゼンチンアリの防除について
 アルゼンチンアリは、繁殖力が強く、どこにでも巣を作るうえ、巣に刺激を与えると女王アリは巧妙に逃げ出して、また別の場所で巣を作って繁殖していきます。そのため、完全な駆除は簡単ではありません。
 家一軒レベルの処理では、一定期間は数を劇的に減らすことは可能ですが、完全根絶は困難です。なぜなら、アルゼンチンアリが発生している場合、その周囲一帯にアルゼンチンアリが蔓延していることがほとんどです。そのため、家の周りのアルゼンチンアリを駆除しても、薬剤の効力がなくなるとまたすぐに周りから侵入してきます。そのため、アルゼンチンアリの防除には、発生地域全体の一斉薬剤処理を行うか、定期的な薬剤処理を行うことが肝要です。

Hohtoトラストによるアルゼンチンアリの防除方法
①巣や生息場所への薬剤の直接散布
Hohtoトラストを2,000倍に希釈し、アルゼンチンの生息場所や巣を中心に敷地全体に散布処理します。できるだけアリや巣穴に直接かけるように散布してください。
②ベイト(毒エサ)工法
Hohtoトラストの2,000倍希釈液に、砂糖やハチミツなどの甘味を混ぜてベイト剤(毒エサ)を作成します。それを脱脂綿等に染み込ませて、食べに来たアルゼンチンアリが溺れたりしなように処置し、アルゼンチンアリが活発に活動している場所に設置します。
③家屋内の営巣箇所(密集箇所)への集中処理

 アルゼンチンアリは、家屋内の壁と物や家具との隙間などに営巣して密集していることも多々あります。このような場合、施主はすぐに駆除を望まれます。そのような場合は、Hohtoトラストを200倍の高濃度に希釈して散布してください。
 ただし、薬剤を(水でも同じですが)、アルゼンチンアリの密集場所に処理すると、フラッシングアウト(アリが刺激に驚いて明るい方に飛び出してくる現象)で、大量のアルゼンチンアリが噴き出します。 あらかじめ掃除機などを用意しておいて、飛び出してきたアルゼンチンアリを吸い込みながら処理すると後片付けが楽です。
 最後にピレスロイド系など速効性のエアゾール式殺虫剤で掃除機のパック内に噴霧して完全に殺してください。
 これは、アルゼンチンアリを他の地域に広げないために非常に重要なことです。
 なお、アルゼンチンアリは、特定外来生物に指定されているので、これを他の場所に運んだ場合は、個人には3年以下の懲役や300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されます。
 ①が最も高い効果を得られる方法ですので、①を基本に、現場に応じて②と③を組み合わせていくのがよいと思います。

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  • 虫ナイ

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