エキジビション・ホールから

 今更いうまでも無いが、エキジビションはこの大会の目玉だけに、ずいぶんな金がかかっている。出陳社数は約160社に上り、ここに行けばPCOに必要なもののすべてがある。縦横3 mの最小ブースの借賃がNPMA会員なら20万円ほど、会員外だと27万円もする。
 17日から20日までの都合4 日間の借賃といっても、ホールが開くのは開会式後の3 時間のほか、なか2 日の昼食時の3 時間と2 時間30分(最終日はほとんど片付け)だから、全部で10時間にも満たない。エデュケーショナル・セッションが開かれている時間中はエキジビション・ホールに入れないよう、厳重に警備される。だからというわけでもないが開場中はエキジビターとPCOの熱気でホール中が沸き返るのも例年通り。
 3週後に大統領選を控え、やや景気が上向いたとはいえ、PCOにとって決してよい社会情勢であるはずが無い。伸張が見られる市場はやっとトコジラミくらいしかない。で、やはりトコジラミのインスペクション/ディテクション、薬剤などが目立つエキジビジョンになった。話題商品2 、3 と筆者が興味を持った商品をご紹介しておこう。
 PestWestはさっそく青色のハエ用ベイターFlorida Fly-Baiter(フロリダ・フライ-ベイター)を出してきた。エデュケーショナル・セッションで話されたように、ハエは青に引き寄せられる。“カラー・アトラクタント・テクノロジー”が特許化されたという触れ込みだ。このベイターはBayerとの共同開発品で、別売りのMaxforce Fly Spot Bait(マックスフォース・フライ・スポットベイト)と組み合わせて使う。
 同社が出すBed Bug Detection Kit(ベッドバッグ・ディテクション・キット)も興味を引く商品だ。トコジラミの出す血糞中のヒト血清を見る青色灯、オレンジ色のゴーグル、ルーペ、ピンセットなど一式が携帯用の箱に組み入れられたキットだから、現場に向かうPCOが1 人1 キットずつ持ちたい。
 Verifi(ベリファイ)については昨年のレポートで詳述したので、ここでは省くが、今年の展示場でもかなり人を集めた。筆者の一押しはSpringStar IncのFirst Response BEDBUG Monitor(ファースト・レスポンス・ベッドバッグ・モニター)。先のベリファイと同じいわゆるデュアル・アクション・ディテクターのディスポーザブル版だ。小さなCO2 発生装置、バイアル入りフェロモン、熱源としての使い捨てカイロ、3 角錐の粘着紙がセットになっている。夜間に仕掛けて翌朝回収する。取説にフェロモンとあるのを教えてと言ったら「企業秘密だ」。教科書にあるアルコール類と思うが、バイアルの中身を粘着紙上にあけた後「バイアルをトラップの上部にくっ付けておくこと」などの説明書きが、いかにも個人商店風で好ましい。サンプルが欲しかったので、「陳列品が余ったら」の約束で、最終日まで待って2 個貰ってきた。
 ディスポ品ではBEAP( ビープ、BUGELIMINATION&PREVENTION;ベッドバッグ・エリミネーション・アンド・プリベンション)の粘着紙が面白い。いかにもトコジラミが入り込みやすそうな隙間を作った繊維加工品。同社からは、ついにトラベル・キットが出た。もともとあるBB Magnet Kit&Detection Trap(BBマグネット・キット・アンド・ディテクション・トラップ)を利用しているのだが、なんとホテルにチェックインして、ベッドに入る前にトコジラミがいるか調べるために使うのだ、と。
 あとひとつ、同じ配給ルートに乗っている特許申請中の延長コードも興味を持って見た。差込口が6 箇あり1 mの延長コードが付いた普通のテーブルタップに見える。が、テーブルタップの裏側には粘着紙の装着口があり、電熱で温まるようになっている。これなら客商売の店でも気付かれずにモニタリングできるかもしれない。
 殺虫剤では生き返ったInvader(インベーダー;前述)のほか、ZOECONのIGRが主成分のエアゾールやピレスロイドとエトフェンプロックスの3 剤合剤のエアゾールが有望だろう。
 しかしなんと言ってもAMVAC社が良く頑張った。EPAが有機リンを再評価にかけた20年をよく耐えた。EPAが次々と要求する安全性、とくに特殊毒性試験を実施し、その安全性を証明して見せた。日本のDDVP普及会も当時は挙げて資金面での応援をした。しかし、日本国内でさえ一時は見限ったものを、トコジラミ再興とはいえアメリカで復活させたのだからすごい。NUBAN(ヌーバン)樹脂蒸散剤は今回のセッションを通じてのヒット商品になるに違いない。
 ILTにもLEDが利用されるようになっている。CATCHMASTERの#918GLOstikPRO(グロースティックプロ)がそれだ。料飲店のカウンター下やいわゆるクローリング・スペースなど普段なら手が届かないところで、コバエなどを捕獲する。


 PCO向け薬剤や機器メーカーやサプライヤー、たとえばBayer, BASF, Bell, Dow,PestWest, Univar, Zoeconなどは、それぞれ展示会場の大通りに面して大掛かりなディスプレーを並べて出陳するのだが、それさえ往年のものに比べれば見劣りするのがこの2 、3 年の傾向だ。各社の使いまわしのロゴ看板さえも、薄汚れて見える。
 それにしても、これら大化学工業会社のほんの1 部門に過ぎないPCO相手の部門が、200~350万円ものブース代をよく出せるものだ。ついでだから書いておくと、開会式やゼネラルセッションの講演者を提供するバイエル、ダウ、FMCなどはそれぞれが別途35000ドルずつ協賛している。しかし、つい先頃までなら、それが50000ドルと知って吃驚させられたのだから、やはりそれなりの後退は否めない。
 そんな中、つい最近デュポンのPCO市場向け部門を買収したシンジェンタの羽振りがいい。アドビオン、アルトリセット、アリロン(いずれもデュポンの製品だった)をシンジェンタのブースに見に来てください、と宣伝する。
 展示会場ではランチが振舞われる。といっても半分に切ったコッペパン(それも随分と湿っている)にスライスハムを挟んだサンドイッチ、全粒粉のクラッカー2 枚、ソフトドリンクかサーバーから自分で注ぐコーヒーだけ。たしか2 年ほど前までは、ほかに丸ごとのいびつなリンゴとポテトチップス1 袋もついた。これぞアメリカ人の昼飯らしいと感じたのが出ていたはず。

 PCO教育でも有名なパデュー大学が今年もブースを出していた。昨年貰ったキャップの白地にPurdue Universityのロゴが私のお気に入り。で、今年も貰おうとしたらただでは呉れない。ブラックジャックでコンピューターに勝てばという。早速チャレンジ。
 手札に来たのがスペードの8 。コンピューターにはスペードのエース。もちろんもう1枚引くとダイヤか何かの6 で、これで14だ。相手はゆうゆうと2 枚目を引くと2 。コンピューターは当然3 枚引きでこれが伏せ札になる。さあ、勝負するかもう1 枚引くか。えい、ままよとディール宣言。伏せ札が開くと、これが絵札だった。勝った。また純白のキャップが手に入った。

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