甚大な経済被害を及ぼすクサギカメムシの生態、発生状況

Chin-Chen Yang (Scotty) Ph.D.
Junior Associate Professor
Kyoto University

序論

 クサギカメムシが日本の自動車輸出産業に影響を与えかねないとの報道がCNNによりされました。また、別の報道機関により、今年の初めには、日本からのニュージーランド向けの自動車、機械を積んだ多くの船舶においてクサギカメムシの発生が確認されニュージーランドへの入港を拒否されているとの報道がなされております。信じがたい事実ですが、実際に小さな虫により何十億、何百億円もの経済被害が発生しているのです。北半球の冬場を中古車に潜み越冬したクサギカメムシは中古車の輸出先であるニュージーランドに深刻な生物的危機を及ぼすのです。クサギカメムシ侵入の危険性を防止するためにニュージーランド政府は日本から輸入される自動車、機械に対し、輸出前の駆除処理を義務付けました。これはクサギカメムシにより汚染された中古車がニュージーランド領海内に持ち込まれないための防衛策です。これは、クサギカメムシ危機に上手く対処できなければニュージーランドに対する最大の自動車輸出国である日本の立ち位置を脅かすといえます。

 今号ではクサギカメムシの生態、効果的な駆除方法についてご説明いたします。クサギカメムシ(英名:brown marmorated stink bug (BMSB)、学名:Halyomorpha halys,)の起源は国、日本、韓国、台湾で貨物に侵入しアジア圏外に拡散し、1996年にアメリカのペンシルバニア州で初めて侵入外来種としてBMSBが初めて報告されたのを皮切りに北米ではアメリカの40の州、カナダにひろがり、欧州では農業害虫、不快害虫とされスイス、イタリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリーを含む欧州各国でも侵入が確認されています。

現在の状況

 カメムシ成虫は隠れて越冬し、4月ごろ住処から這い出し、生殖機能が成熟すると農作物ではなく、まず広葉樹や低木に群がります。BMSMは果実、液果、野菜、園芸植物やその他農作物など100種以上の植物に寄生することができます。BMSB(クサギカメムシ)は 様々な農作物の子実体に吸汁管を挿入し果汁を喫食します、喫食する際に農作物が傷つけられることにより経済的な損失が生じます。クサギカメムシによる吸汁により傷んだ農作物は商品価値が低減するだけでなく、実りが低減したり、果実や花が成熟前に落ちたりと様々な影響が生じます。またクサギカメムシの吸汁管を介して植物に有害種類のバクテリア、菌類が媒介され果実を腐らせます。クサギカメムシの大量発生により収穫量が50%以下に激減するといった実例が多く報告されております。

 不快害虫でもあるクサギカメムシは越冬の為に暖かい家の中に侵入してくることがあります。侵入してくる個体数が少なければ不快なだけですが、しかし数千頭の個体が侵入してくる場合は深刻な問題です。また、クサギカメムシによりアレルギーを発症したり、カメムシの放つ悪臭ありますが、咬んだり、病原菌を媒介することはありません。

 クサギカメムシが深刻な被害が生じさせられるのにはいくつかの理由がありますが、最も重要なポイントとしては、非常に高い人口建造物に対する適応性をもつことです。大量の成虫が越冬の為に群がって快適な屋内に侵入してくることがあります。この習性は近縁のカメムシ類の中でもクサギカメムシ特有の習性であり、それにより他の近縁種のカメムシ類より過酷な環境を生き延びることができるのです。

蔓延への過程

 クサギカメムシが深刻な被害をもたらすにはいくつかの理由がありますが、最も重要な点はクサギカメムシが驚くほど人工構造物に順応することです。成虫は大群をなして越冬の為に過酷な環境から護られる屋内へと侵入してくることがあります。この習性はクサギカメムシ及び近縁種にみられる独特の習性です。
 地形的条件が異なる場所における個体数を比較分析すると、地形と個体密度の高い場所との因果関係がわかります。線路や湿地などの場所は個体密度が高く、そこか農地へと蔓延していきます。この蔓延パターンは農業地域と住宅地域が隣接する場所にあてはまり、クサギカメムシは住宅地域で越冬、増殖し暖かくなると餌の豊富な農地へと蔓延し更に個体数が増殖します。更に、クサギカメムシの成虫は移動性に非常に長けており、農地を移動しながら採食を続けます。クサギカメムシは1日に112キロ以上を飛翔し移動することが可能で、遠く離れた場所へ好みの農作物を求めて採食活動を行います。

駆除方法

 個体数が比較的少ない場合であれば、物理的に取り除く方法が有効です。洗剤を水で薄めたものをバケツに入れ、手で捕まえたクサギカメムシを入れてください。手持ち式小型掃除機で吸引するのも有効な方法です。物理的防除をより効果的に行うには、フェロモントラップを使い特定のエリアにクサギカメムシを誘い込んで行うと効果的です。

 アジア圏で捕食節足動物、寄生性双翅目、膜翅目を含む複数のクサギカメムシの天敵生物が発見されていますが、天敵生物を用いた駆除の効果は生態系により大きく左右されます。これは、宿主植物の種類と構成、地形的要素、土着の天敵生物の構成が大きく関係していることを示しています。アジア圏におけるクサギカメムシの蔓延を危惧したアメリカの政府機関は検疫施設で数種類の寄生バチを用いた天敵駆除法を研究しています。地理的条件によるクサギカメムシの発生を抑制するには、アジア圏土着の寄生バチを用いることにより長期的解決ができると思います。

 クサギカメムシ発生地域においては農作物を護るためには薬剤による駆除が最も一般的です。これまで数多くの殺虫成分のクサギカメムシの成虫、幼虫に対する有効性が実証されてきました。ピレスロイド系(ビフェントリン、ペルメスリン、フェンプロパトリン、ベータシフルとリン)、ネオニコチノイド系(ジノテフラン、クロチアニジン、チェアメトキサム)、カーバーメイト系(メソミル、オキサミル)、有機リン系(アセフェート)、有機塩素系(エンドスルファン)など多くの有効成分がガラス面における残留効果や局所への触接接触、バイオアッセイ、フィールドテストなど様々な手法で試されました。しかしながら、これらの殺虫成分は幅広く様々な虫に対する殺虫効力を持っており、クサギカメムシだけでなくクサギカメムシの天敵生物も駆除さてれしまします。更なる研究において総合的防除の観点からクサギカメムシ駆除における薬剤の使用方法を検討するべきです。

家屋へのクサギカメムシ侵入防止策

  1. ドアの隙間を塞ぐ
  2. 煙突、通気口に防虫網を設置する
  3. 窓の周りや外壁、床下のひび割れや隙間をコーキングで塞ぐ
  4. 数が少ない場合は捕まえて石鹸水を入れたバケツに入れる
  5. 大量に発生している場合は掃除機で吸引する

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