FAOPMA2018(中国深セン)視察レポート

鵬図商事株式会社
企画部 芝生圭吾

 アジア・オセアニア地域のペストコントロールのイベント「FAOPMA Pest Sumit」が2018年9月26日~9月28日に中国(深セン)に参加させて頂きましたので、下記にご報告させて頂きます。

1.開催都市:中国深センについて

 今回開催された深セン市は「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる、IT産業で急成長した市になります。1970年代は人口3万人の貧しい漁村でしたが、1980年経済特区に指定され急成長し、2017年には人口1253万人と、約40年で人口が1,250万人増加しました。市内散策をしてみると、高層マンションやショッピングモールなど商業施設の建築ラッシュが進んでおり、近代化した中国を目の当たりにしました。中国は農村部と都市部の経済格差が非常に大きい国です。深セン市は中国で3番目に物価が高く、物価は日本とあまり変わりませんでした。

2.開会式

 大会の参加登録者数は約2,000名、開会式は約1,200名が参加し、派手なライトアップと共に各国のPCO協会会長などが登壇し、挨拶をしました。入場BGMは日本のアニメ「ガン〇ム」に出てくるBGMが使われていました。2017年に創設された「World Pest Day」についての紹介がありました。World Pest Dayは、一般の人々に公衆衛生を保護する為にペストコントロールが重要な役割を占めている事を知ってもらう世界的なイベントとして創設され、毎年6月6日にイベントを行っています。

3.基調講演

 フロリダ大学で蚊とシロアリの研究をされているClaudia Riegel博士が「健康とペストコントロール」をテーマに講演されました。講義内容は、人の健康に害虫がどのように影響するか、ネズミやゴキブリが引き起こすアレルゲンについて、ネズミや蚊が媒介する感染症について、感染症予防にPCOがどのように関わっているか、ニューオリンズの事例を元に紹介といった内容でした。アジアはデング熱やチクングニヤ熱などの流行が多い地域ですので、参加者に関心の高い基調講演だったと感じました。

4.講義

 今までの大会とは講演の形式が異なっており驚きました。半分以上の講義がプレゼンを使用せず(使用しても1.2ページで中国語表記)に中国語で話すスタイルでした。同時通訳サービスが中国語→英語で用意されていました。講義のテーマは感染症対策から害虫の生態・駆除方法、最新技術の活用方法など多岐に渡ります。テーマを数例ご紹介させて頂きます。
 中国における新しいPCOのリーダーシップ、航空機内など特定状況下のトコジラミ駆除、SCO青島サミットなど主要イベントに対する害虫駆除活動の振り返りと考察、中国公衆衛生基準の紹介、デング熱発生時におけるPCOの戦略、PCOのドローン活用、ネズミや害虫のモニタリングにIOTを活用などです。今回はIoT関係の講義について簡単に紹介させて頂きます。

PCOのドローン活用

 中国ではPCOが業務の一部にドローンを活用しているという講義がありました。
 ゴミ処理施設、公園、沼地などでの広大なエリアでの調査に活用されています。
 また、人が立ち入りにくい施設の外壁や天井周りなど、有害生物の侵入箇所特定に活用が期待されています。また、デング熱など蚊が媒介する感染症が流行した際、ヘリコプターによる空中散布などが行われる事がありますが、大型ドローンならば、ヘリコプターの10分の1以下のコストで行う事が出来ます。講義の中で、小型ドローン、大型ドローンのデモンストレーションも実施されました。軽快な動きで上下左右に飛行ができ、ホバリングなどもできます。施設外周の調査を行えば、今まで発見できなかった侵入箇所の特定などに役立てる事が期待されています。
※日本ではドローン使用に規制がありますので、もし試す場合は、規制をご確認下さい。

ネズミや害虫のモニタリングにIoTを活用

 もしホテルやレストランでネズミを見かけたと口コミサイトに投稿があったら、取り返しのつかない損害になります。インターネット口コミサイトが普及し、レストラン訪問客の79%が口コミサイトの評判を確認しており、ハーバード大学では口コミサイトの星1つ増加すると売上が5~9%増加すると分析しています。もしもお客様が害虫やネズミを見かけたら、すぐに悪い口コミを投稿し、全世界に発信されてしまう時代になりました。ですので、ホテルやレストランはネズミや害虫の駆除だけではなく、予防にも力を入れなければいけない時代になってきました。ネズミや害虫のモニタリングにIoTを活用し、速やかな駆除と予防プログラムを構築する事が今後重要になってきます。食品工場や飲食店などに各種ツールを設置し、無線で親機にデータ送信、親機をインターネットに接続すれば、世界中どこにいてもモニタリング情報をリアルタイムで確認出来るようになります。生息が確認出来た場所を重点的に対処する事で効率的な駆除と予防を可能にします。

【各種IoTモニタリングツール】

名称 概要 写真
スマートコネクト 全てのセンサーを繋ぐ親機になります。
インターネットに接続しデータを送受信します。
スマートキャッチ ネズミの捕獲罠になっており、捕獲されると情報が送信されます。捕獲数は最大1匹です。
スマートアイ 動体検知センサーになっており、ネズミが通過すると情報が送信されます。狭い場所にも設置可能
スマートセンサー 粘着紙がセットされており、ゴキブリや飛翔昆虫を捕獲すると情報が送信されます。
スマートパイプ 配管・下水管などに設置する事ができるセンサーです。ドブネズミなど配管を通る事を好むネズミに有効で、パイプを通過すると情報が送信されます。
スマートボックス ネズミの捕獲罠になっており、捕獲されると情報が送信されます。複数匹を捕獲する事ができます。

これらの機器を使用した現場では生息数に大幅な変化が確認出来ました。

 モニタリング開始時は200匹近い生息が確認できた2現場で、11週間で79%減少、19週間で96%減少、25週間で96~99%のネズミの生息を減少させ、その後限りなく低い生息数を維持する事に成功しています。侵入があった時すぐ対処する事が何よりも重要です。IoTを活用したリアルタイムモニタリングは、それを可能にします。

5.展示会

 展示ブースは104社と例年にない非常に多い出展数となりました。主な展示商品は殺虫剤、殺鼠剤、捕虫器、煙霧機、噴霧器、毒餌箱、蚊の生息調査などとラインナップは代り映えありませんが、IoTを活用した機器もあれば、手作り風の怪しさ満点な殺鼠剤、アメリカで見た事ある機械にそっくりな商品、素焼きレンガ製のベイトステーションなど、まさに「玉石混交」でした。展示の装飾も派手で資料も立派な会社もあれば、テーブルに商品と中国茶と灰皿を置き、お茶を飲み、タバコを吸いながら(中国の法律で屋内は全面禁煙ですが気にせず喫煙していました)商談している会社もありました。

6.中国で上市されている殺虫剤の有効成分

 中国ではどんな有効成分の殺虫剤が多く使われているのか?気になりませんか?
 中国の農薬・殺虫剤メーカーである功成生物科技有限公司の発表資料によると、中国では農薬、除草剤などを含めた殺虫剤ジャンルの有効成分は約900種が登録されており、有効成分別の登録数順位は以下になります。上位15位中ピレスロイド系殺虫剤が10種占めている事からもピレスロイド系殺虫剤が主流と言えます。ピレスロイド系殺虫剤は全部で22種類が登録されています。有機リン系殺虫剤は上位30位以内だと1種類のみ(クロルピリホス)でした。
 今回のFAOPMA大会では、薬剤フォーミュレーターの出展が多く、中国は日本よりも殺虫剤殺鼠剤の上市がしやすい環境なのかなと感じました。

順位 有効成分名 系統 登録数
1 テトラメスリン ピレスロイド系 343
2 ペルメトリン ピレスロイド系 318
3 プロパルギル※除草剤 276
4 ラムダシハロトリン ピレスロイド系 272
5 アレスリン ピレスロイド系 245
6 β-シペルメトリン ピレスロイド系 243
7 サイパーメスリン ピレスロイド系 140
8 ビオアレトリン ピレスロイド系 128
9 フィプロニル フェニルピラゾール系 108
10 シクロヘキシミド 微生物殺虫剤 96
11 プロポクスル カーバメイト系 85
12 トランスフルトリン ピレスロイド系 85
13 テフルトリン ピレスロイド系 77
14 イミダクロプリド ネオニコチノイド系 63
15 ジメトリン ピレスロイド系 62

7.中国の食品衛生

 経済発展著しい中国は急速な近代化が進み、衛生環境の整備も急速に行われています。中国の屋台などはドア全開のオープンな環境で、衛生状態を心配してしまう店もありますが、ショッピングモールなどで営業している飲食店のホールはしっかりと清掃されており、清潔に見えました。
(日本と同様ホールが綺麗=厨房が清潔とは限りませんので、油断はできませんが・・・)
 店頭には衛生チェック結果が掲示されています。日本に帰国してから調べてみると、中国の飲食店(正規営業届けを出している)は中国食品医薬品局(CFDA)による衛生チェックが義務付けられており、その結果を店頭に掲示する事が義務付けられています。私達のような観光客も安心して食事をすることが出来ます。まさに中国の衛生環境も「玉石混交」です。
※深セン市は経済特区だった為、CFDAではなく深セン市の税関が食品の衛生チェックを行っている。他市の場合はそれぞれの市の食品医薬品局(FDA)が管轄となります。

8.ホテルのトコジラミ対応

 最終日に深セン空港直結しているハイアットリージェンシーホテルに宿泊をしたのですが、同行したYさんがチェックアウト時に肌の痒みを訴えました。腕や足など4~5か所に虫刺され跡があり、痒くてたまらない。トコジラミではないか?とホテルマンに相談した所、以下の対応をして頂きました。

①被害箇所の写真撮影と聞き取り調査

 痒い場所全ての写真を撮影し、どのベッドで寝たのか?など聞き取ります。

②すぐに調査する事、もしトコジラミによる被害だった場合は返金する事を約束してくれた

 部屋をすぐに調査し、もしトコジラミの痕跡があった場合は宿泊代を全て返金させて頂きます。
 という事を約束して頂きました。

③トコジラミ生息調査(2回)

 フライトまで時間があったので、2時間後に抜き打ちで様子を見に行ってきました。早速、ハウスキーパーが生息調査を行っていました。また、この後、PCOによる生息調査も行ったそうです。
 私も5分位マットレスやヘッドボード周辺を目視調査しましたが、痕跡は発見出来ませんでした。

④調査結果の報告メール

 被害相談から12時間後、ホテルからEメールが届きました。ハウスキーパーとPCOで2回生息調査を行ったが、トコジラミの痕跡を発見出来なかった事が報告されました。また、まだ痒みは続いているのかなど、トコジラミを特定する為のヒントが欲しいので協力して下さい。という事が記載されていました。

⑤宿泊者(Yさん)の感想

 チェックアウト時はトコジラミに間違いないと思っていたYさんも、ホテルの対応が想像以上にしっかりとしており、迅速だった事から、ここまでしっかりしているのなら、トコジラミは勘違いだったのかな?と思うようになりました。ホテルの対応に満足し、これ以上の調査は不要となりました。
 ホテルに対しての信頼は宿泊前よりも増しました。これからも安心して宿泊する事が出来ます。

⑥ホテルの対応で良かったポイント

・宿泊者の痒み被害を「そんなはずはない」等と否定しなかった。
・宿泊者がトコジラミ被害を訴えた時の対応方法が決まっていた。
・迅速な対応だった(調査、報告)

9.日本にもビジネスチャンスはあるか?

 近年では日系企業のアジア進出はよく聞くようになってきました、日本の衛生環境の意識・技術を輸出する事も大きなチャンスだと感じます。アメリカの大手PCOがアジアに進出していますが、クマネズミはアメリカでは少なく、対応に苦慮しているようでした。クマネズミ対策は日本のPCOの方がノウハウあるのでは?と感じました。

10.中国視察 雑記

 日本と近いのに全く別の文化を築く中国。視察中に感じた事をいくつか紹介します。

「早いもの勝ち」が原則

 彼らの原則として「早い者勝ち」という考えが根付いています。
 3階から5階にエレベーターで移動したいとします。中国人はエレベーターが来たら下階行きでもまず乗ります。下階行きに乗らず、上階行きのエレベーターが来るのを待つ事で、人がいっぱいになってしまって乗る事が出来ないのが嫌なのです。まず行動する事で権利を獲得します。

監視社会の中国

 中国では市内のあちこちに監視カメラが設置されています。今回遭遇したケースをご紹介します。Yさんが深セン空港で現金が入った財布を無くしてしまいました。スリにあった可能性もあるので警察に相談しに行きました。警察官に亡くした物の特徴、行動した場所、滞在時間を伝えると、早速、監視カメラを確認しています。30分経過後、財布が返ってきました。スラれたと思っていた財布は、Yさんが自分で置き忘れており、それを空港職員が保管していました。監視カメラによって紛失場所を特定する事ができ、1円も取られる事無く財布が無事帰ってきました。

偽ブランド品のデパート

 中国は偽ブランド品も有名で、昔は上海が有名でしたが、大規模な摘発の結果で激減し
 今は深センが偽ブランド品生産地の主流となっているそうです。観光名所として偽ブランド品ばかりを扱った商業施設「羅湖商業城」を視察してきました。7階建ての建物には100以上の店があり、その7割以上が偽ブランド品を売っています。偽ブランド品はバッグ、時計、洋服、アクセサリーが中心です。価格はあってないような物で値切り交渉を楽しむ事が出来ます。POLO RALPH LAURENのポロシャツが日本の4分の1、RIMOWAのスーツケースが日本の10分の1程の価格です。但し、RIMOWAのスーツケースにブランドマーク(タグ)は付いていません。指摘すると店員のポケットからRIMOWAブランドのシールが出てきます。ブランド品として税関を通過しようとすると、偽物がばれて、没収される事があるので、日本に帰国してから自分でRIMOWAのシールを貼ってくれと言われます。 意外に買っていく日本人は多いそうです。

中国では英語が殆ど通じない。

 中国では、英語が殆ど通じませんでした。国際ホテルグループのヒルトンホテルや、シャングリラホテルなどなら英語で言っても通じるだろうと思っていましたが、全く通じません。中国語表記のホテル名(香格里拉大酒店=シャングリラホテル)を書いた紙を用意して対応しました。

11.視察の感想

 今まで生きてきた日本と全く違う文化、考え方と接する事は大きなカルチャーショックでした。
 講義も展示商品も中国の衛生環境も全て「玉石混交(良い物も悪い物も入り混じっている事)」でした。中国は数で圧倒する力があります。日本の10倍以上国民がいるので、良い物も悪い物も日本の10倍あってもおかしくありません。後は、埋もれてしまっている「ダイヤの原石(ビジネスチャンス)」を見つけるだけです。今回の中国視察でダイヤを見つけるヒントを得る事が出来ました。

12.最後に

 私は英語も中国語も話す事が出来ません。ですので、外国人に話しかけるのはとても勇気がいります。人見知りもしてしまいます。凄い勢いで話しかけられると今でも怖いです。しかし、海外展示会に何年も参加させて頂いた事で心境に少しだけ変化がありました。
 FAOPMAやNPMAに参加する人は、「ペストコントロール」という仕事に関わっている仲間達です。困ったらペストコントロールの話をすればいいじゃないか。そう思えるようになってきました。
また、語学をサポートしてくれる非常に優秀な翻訳ツール(翻訳機ポケトーク、Google翻訳など)も増えてきました。リアルタイムで言っている事が分からなくても、プレゼンを写真撮影し、写っている文字を翻訳すればおおよその内容もわかります。当レポートの講義内容や商品なども全て翻訳ソフトや辞書を活用して書かせて頂いています。こういった優秀な翻訳ツールを使用する事で、海外PCOやメーカーの人に「良い殺虫剤は無いか?」「クマネズミ対策の良い商品ないか?」などと、少しだけ話しかける事が出来るようになりました。安心して下さい。今まで会話が出来なくて怒り出す人はいませんでした。むしろ、日本のペストコントロール事情はあまり世界知られていませんので、相手も興味津々であなたの話を聞きたがります。もし、英語が出来ないのでFAOPMAやNPMAに興味があるけれど、参加に躊躇してしまう事がある時は、是非私に声を掛けて下さい。
 一緒に「ペストコントロール」という共通の話題で国際交流にチャレンジしましょう。

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