千葉県で発生した高病原性鳥インフルエ ンザの対応 その2 インタビュー

鵬図商事株式会社 足立 雅也

 
 車両消毒を行っている消毒ポイントを訪問した。そこで作業をしている、ベイトータルサービス・ジャパン㈱の藤邑真一郎さん、田原浩二さん、丸山晃弘さんの3人から貴重な話を聞かせていただいた。

 足立 「では、最初の質問です。一日に何台ぐらい車両消毒をするのですか。」
 藤邑 「多い日で90台以上ありましたが、少ない日で5、6台です。」
 足立 「どんな薬剤を使っていたのですか。」
 田原 「パンパックスとアストップが同じ有効成分で、並行して使っていました。」
 足立 「車両1台に消毒液はどれだけの量を使うのですか。」
 田原 「車両の種類によって変わります。例えば飼料を運ぶトラックはかなり大きな牽引車で、40~60L使いました。一方、営業車のワゴンには10L程度です。」 

 足立 「作業はいつまでの予定ですか。」
 藤邑 「4月3日の検査で陰性でした。現在は様子をみる期間に入っていて、何もなければ15日0時0分を以って終息宣言となります。つまり14日の作業が最終になる予定です。」
 足立 「現場で困ったことがあったと思いますが、どのようなことがありましたか。」
 田原 「震災の影響が大きかったです。消毒ポイントまでの車のガソリンと動力噴霧器の燃料の入手が困難でした。行政の方であっても優先的にも入れてもらえませんでした。」
 藤邑 「社内で協力し合ってなんとか入手しました。日常業務で夜勤の者は、終業後に早朝からガソリンスタンドに並んでくれて、入れてきてくれました。そこまでしないと消毒ポイントまで来れなかったかもしれません。」

 足立 「中にはご理解を得られなくて、ドライバーとのトラブルはなかったですか。」
 田原 「車両消毒が始まった当初はありました。『なぜ養鶏場から出るときだけでなく、入るときも消毒が必要なんだ。』と言われた、と別の班から聞きました。」
 藤邑 「福島ナンバーの車が、放射能の徐染と思って、消毒ポイントに入ってくることもありました。車両消毒の必要性をほとんどの方がご理解をしてくれていて、大きなトラブルはありませんでした。」
 田原 「消毒剤をずっと噴霧しているので、近所の農家の方が農作物に影響がないのか心配して確認に来ました。」
 藤邑 「国道51号線に消毒ポイントがありましたので、国土交通省の方が職務質問に来ました。白のつなぎ服は原発問題の報道で見かける姿と同じですから、許可もなく放射能測定でもやっているのではないかと思ったようです。」
 足立 「朝6時から夜10時までの作業だと聞いておりますが、そのことでの苦労はありましたか。」
 丸山 「気温が氷点下になったことがあって、ホースに残った消毒液が凍ったことがありました。ホースを揉みほぐしてからエンジンをかけて消毒液を循環させると、徐々に溶けてくれました。」
 田原 「寒いときは気持ち的にも縮こまってしまっていて、精神的にもつらかったです。」
 足立 「雨の日もあったと思いますが。」
 藤邑 「雨の日は泥が車両の下回りにこびりついているので、それを落とすつもりで、言ってみれば洗車の感覚で行いました。」
 丸山 「動力噴霧器のエンジンを雨から守るために、自前のタープテントを使いました。」
 足立 「初めての車両消毒であり、高病原性鳥インフルエンザの対応ということですから、不安なんかあったと思いますが。」

 藤邑 「殺処分や汚染区域での消毒作業をやるものだと不安はありました。また、想像と違っていたのは、現場に入る前に1時間程度でもミーティングがあると思っていましたが、実際にはありませんでした。ですから取り決めもなく、噴霧の仕方も各自それぞれでバラバラでした。それも不安の一つでした。」
 足立 「現場それぞれで対応するのでマニュアルは必要ないのでしょうか。」
 田原 「いいえ。大まかでもポイントはマニュアル化した方がよいと思いました。例えば車両の種類によって消毒すべき部分、消毒ポイント立ち上げまでの流れ、役割分担なんかがそうです。」
 藤邑 「不安があったからこそ、事前に勉強もしたので、なんとかやれてきました。その結果として順調に進めることができてよかったです。」

さいごに

 まだ終息宣言が出されていない、重要な勤務中であるときにもかかわらず、インタビューに応じていただいた千葉県ペストコントロール協会の皆様に感謝いたします。この経験が引き継がれ、今後の緊急時には、県内外問わず活かされることを期待しています。

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