発泡剤の活用方法(2)

泡の働き

 発泡施工は、泡が消えて液体が蒸発した後に、有効成分があまねく行き渡らせ、残留させる施工方法です。
 液状の有効成分は、自重により気泡面の下方へ落ちて行きます。泡に含まれていた液状の殺虫剤が泡の下の面に行き渡った後、ただの気泡が残ります。そういった気泡には界面活性剤しか含まれていないため、無色透明もしくは半透明となります。上面の処理には不向きです。泡が接触した全ての面に殺虫剤の有効成分が残留するわけではありません。コンクリートスラブの下部にあるくぼみに散布された泡はスラブに接触することはあっても、接触上面に対しての殺虫効果ほとんどありません。

…泡が消えると…

 ウェットフォームの気泡は散布後約30分で消失します。これは液状殺虫剤が処理する部分に届いたサインですので、泡の使用における重要ポイントです。例えば、レストランの床面の全排水口に泡を散布した場合、気づかれることがないよう短時間で泡が消える必要があります。

 ドライフォームの気泡にはごく少量の液体成分しか含まれておらず消えるのに非常に長時間を要します。ドライフォームの気泡は、含まれている液体が泡の下に行き渡る際に丸みを帯びた形から角ばったものに変化します。箱型になった気泡は長時間残存します。

地面における泡の移動

 泡を使用することの最大の利点は、起伏のある面でも広がり、障害物を迂回できることです。泡は液体と同じくノズルを使って施工しますが、移動速度は遅く立体的な動きをします。泡の層は移動するにつれ水平面全てに接触し、移動方向に存在する立体的な障害物を迂回して進みます。泡は後方から押される形で移動するため進行方向にある物体を取り囲みます。ノズルから噴出される段階で押される形となっています。

 シロアリ駆除剤のノズル(180°)から液剤が出る様子をご覧いただくと、泡のこういった性質の利点がよくご理解いただけると思います。コンクリートスラブの下部を処理する際、スプレーの正面に障害物があるとスプレーできない「未処理面」ができます。パイプや盛り土、地面の深いくぼみなどがそれにあたります。未処理の面はシロアリその他の害虫にとって格好の侵入経路となります。液状殺虫剤のウェットフォームを散布することで、様々な形状の障害物の全ての面を処理することができます。

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コンクリートスラブの下部に泡処理を施す

 コンクリートスラブ下の地面を液剤で処理する場合、シロアリ駆除剤をまんべんなく散布できない場合が多いと言えます。パイプその他の障害物の存在により、液剤を均一に散布することができないため、処理できない「未処理面」が必ず残ります。コンクリートスラブ下部の泡処理に関する調査で、地面の表面が処理された状態が持続することがわかっています(トーマスら1993年)。泡処理によりシロアリ駆除剤がより均一に残留するようになり、建造物の保護効果が高まります。

壁の裏に泡処理を施す

 壁の裏に泡処理を施すことで、この場所に住みつき移動経路として使用している害虫を効果的に駆除することができます。狭い空間の側面及び底面の木材に殺虫剤が残留することが重要です。シロアリが食い荒らし、ゴキブリやセイヨウシミの隠れ家になり、トコジラミやアリの移動経路になるのは木材だからです。処理に必要な穴は幅木の上部にあけます。

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床面の排水口に泡処理を施す

 バイオ洗浄剤や害虫駆除剤を床面の排水口に施工するのに泡は大変有効です。バイオ洗浄剤の作用機序は排水口内の有機物の除去です。剤に含まれる微生物が有機物を分解するため、チョウバエやノミバエの幼虫のエサがなくなるのです。

 床面や風呂場の排水口に泡を使用する利点は、排水口から排水パイプに至るまで全面に行き渡ることです。バイオ洗浄剤をパイプの奥にも使用することでチョウバエの繁殖を更に抑えることができます。

結論

 泡処理はどのような面や基部においても有効な処理方法と言えます。コンクリートスラブ下の空間や壁の裏、排水パイプなど、直接目視することができない現場において特に有効であると言えます。ウェットフォームを使用することで這って移動する種の害虫が接触する面に効果的に有効成分を行き渡らせることができます。

参考文献:
公益社団法人日本木材保存協会「ロングラール乳剤を用いる発泡施工法」p.97(1990年)
クロード・R・トーマス、ロバート・A・バーロウ、ウィリアム・H・ロビンソン著 Dispersal of a termiticide foam beneath concrete slabs(コンクリートスラブ下へのシロアリ駆除泡剤の散布)、「衛生動物(日本衛生動物学会誌)」44巻4 号(1993年)

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