ペストワールド2012:ボストン大会から②


(エデュケーショナル・セッション前号からの続き)

■ PCOのための飛翔性昆虫管理:フィリップ・G・ケラー、ジョン・クーキー(フロリダ大学)

 アメリカでは未だにハエ類の管理も施工の主要部を占めるようです。幾つかの新知見が披露されたなかでも、特筆するべきはフロリダ・フライ・ベイトの開発試験でしょう。

1.ハエ類の生態など
 例の通りケラーさんのプレゼンは興味が尽きない。ハエ類の幼虫(ウジ)の動きを、BGMにあわせてブレークダンスを踊っているように見せたりする。
 ハエ類を大まかに大型と小型に分けての説明。大型のハエ類(ニクバエ、クロバエ、イエバエなど)は屋外で生まれて、隙間を見つけては屋内に侵入する。これに対して、小型のハエ類(ノミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエなど)は屋内に繁殖場所がある。と、極めて一般的な話から。

2.ハエ用ベイトの使い方

 アメリカではとくに大型のハエ類の防除にベイト剤が使われる。
 主な商品に;
・Golden Malrin Scatter Bait(カーバメート系のメソミル含有)
・MaxForce Granular(ネオニコチノイド系のイミダクロプリド含有)
・MaxForce Spot Bait(同上)
・Quik Strike Granular Bait(ネオニコチノイド系のジノテフラン含有)
等があり、商品によっては「屋内使用禁止」「ダンプスター(大型ごみ箱)専用」「ベイトステーション内で使用する」などの注意があったりするので留意する必要がある。

 これらの製品を供試したテスト例が紹介された:
・ゴールデン・マルリン・スキャター・ベイトはケージ中の全イエバエをおよそ2 分14秒で死滅させた。
・マックスフォース・スポット・ベイトはイエバエ用の残留塗布剤。ベイトを用法どおりに水で薄め、厚紙に浸みこませて150頭
のイエバエが入っているケージに入れると、約2 分以内に全滅させることができた。

3.フロリダ・フライ・ベイターの開発試験:ハエは色に誘引されるか?
 この講演は筆者にとって、もっとも興味をひくもののひとつだった。ケラーさんのプレゼンもいよいよ絶好調。

(1)実験方法
 試験装置は光を通さない雨樋ほどの太さのT字型の管。T字の横棒の両端にあるケージは、色が良く見えるように明るくしてある。両端のケージには、比較する色板をそれぞれ配置する。T字管の縦棒下側からイエバエを放ち、どちら側へ誘引されるかを観察するという実験方法を説明する。と、スライドには右側にロムニー、反対側にオバマの写真があった。「さて、ハエはどちらに行くでしょうか」でPCOたちの大爆笑をとる。
 結論から言えば、いままで“絶対と信じられていた”「ハエ・トラップは黄色」が否定されただけに、今後の反響の大きさが分かろうというもの。

(2)結果
 実験には黄色、青色、白色の色板が用意され、2 色の組合せで誘因性の比較を行った。
・青色対白色では、青色に向かったハエ59頭に対し白色に誘引されたハエは26頭と、ほぼ2 : 1 で青色の勝ち。
・青色対黄色では、青色に誘引されたハエ70頭に対し、黄色は18頭でしかなく、青色の誘引効果は黄色のおよそ4 倍だった。この実験結果は、イエバエは黄色や白色よりも青色を好むことを示した。
 次に青色板へ、黒や黄の縦縞を入れた色板を作り、同様に試験した。
・青色板に黒の縦縞入り:縦縞なしでは…75頭対25頭で黒の縦縞入りの勝ち。
・青色板に黄の縦縞入り:縦縞なしでは…47頭対53頭と黄の縦縞入りの負け。
 この実験結果から、イエバエは黄色を忌避すると考えられた。

 PCOがいま使っているハエ類用の粘着トラップは黄色く着色したものが主流だ。ところがこれらの実験は、黄色はイエバエが忌避する、とした。この実験はPestWest(ペストウエスト)社とπx Ω(パイカイオメガ:PCO産業育成のため、薬剤や機器開発援助や研究者への資金援助などを目的に、学者等が中心になって活動するグループ)が支援したものだけに、市場に数あるトラップの売上に大きな影響を及ぼしかねない。

4.ハエ類とそのコントロール
 ここからは共演者のジョン・クーキーさんが演述した。インセクト・ライト・トラップ(ILT)、ベイト剤、ドレイン(阻集器)および防除剤の概要が話された。

(1)インセクト・ライト・トラップ(ILT)
 ハエ類のモニタリングに欠かせないのが紫外線ランプを用いるライト・トラップだ。捕らえたハエ類はその数とともに、必ず同定することが肝要。
 どこへ取り付けるかも重要。とくに気をつけたいのが外部から虫を呼び込むことがない場所で、高さ3 ~ 6 フィート(床から1 ~2 m)までの他の光に邪魔されない壁面に、1000平方フィート(約90m2)あたり2 台設置する。
 ILTのメンテナンスで大切なことは、定期的な粘着紙とランプの交換。ランプの輝度と波長は時間経過と共に変化するので、最低でも1 年に一度交換する。

(2)ベイト剤
 ベイト剤は、ベイトで死んだハエから他の個体へと薬物が伝搬されることもあり、数ヶ月間の有効性が認められる。(商品はケラーさんが説明済みなのでここでは省略する)

(3)ドレイン(阻集器)
 毎月のチェック・サービス(点検作業)として最適の仕事だ。ドレインのクリーニングはコバエ防除にも有効。微生物利用(マイクロバイアル・トリートメント)のスプレー泡剤や注入剤が効果的。スチーム処理ならドレインのクリーニングにも利用できる。基本的にはドレインには様々な形態があるので、その構造を理解すること。ビデオカメラで覗くのもよい。汚れの中にはコバエ類のウジが生息するので、クリーニングとともに、殺虫剤の使用も考慮する。ドレインのコバエ類にはフォギング(煙霧)処理が有効だ。

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